マイクロソフトが、マイコミジャーナル及び、雑誌「Web Designing」と共同で、開催した、無料セミナー「WebsiteSpark マイクロソフト×マイコミ 共同セミナー」。同セミナーでは、同社が各種Web向けの開発ツールやサポートを無償で利用できるようになるプログラム「WebsiteSpark」に含まれる「Visual Studio 2008」の活用術などを紹介した。前編に続き、後編ではVisual Studio 2008を使ったWebアプリケーションの構築方法を紹介していく。
Visual Studio 2008を使ったWebアプリケーションの構築方法
Visual Studio 2008を使ったWebアプリケーションの構築方法の紹介に関するセッションでは、ASP.NETに含まれるいくつかのフレームワークを利用したWebアプリケーションの作成方法の違いについて、マイクロソフトのデベロッパー&プラットフォーム統括本部のエバンジェリスト・井上章氏により語られた。ちなみに、ASP.NETとは、動的なWebアプリケーションを作成するためのフレームワーク群であり、様々なフレームワークが用意されている。今回井上氏が紹介したのは、Webフォーム、ASP.NET AJAX、ASP.NET MVCの計3種であった。
Webフォームは、Visual Studio 2008にあらかじめ用意されたフォームなどの部品(コントロールと呼ばれる)をドラッグ&ドロップで配置し、それをサーバーと結びつけて処理を行う事ができるという、比較的にデザイナーにとっても理解しやすいフレームワーク。サーバーとの連携を、今回はC#を使って実演が行われた。Webフォームは、UI(ユーザーインタフェース)と実装(プログラム)の分離が簡単に実現可能なため、コラボレーションが行いやすい。ポイントは、Webフォームにはポストバックという仕組みが取り入れられており、フォームのポスト先が現在のWebページと同じであることが特徴だとのこと。
次にAjaxを使ったWebアプリケーションの構築が簡単に行うことができるフレームワーク「ASP.NET AJAX」。このフレームワークでは、通常AjaxはJavaScriptとサーバーを非同期で通信し、HTMLをリアルタイムに更新することができるのが特徴だが、これをJavaScriptで書くことなく実現可能にしている。マイクロソフトではオープンソースにも力を入れており、ASP.NET AJAX Control Toolkitというオープンソースのコントロールを配布している。これを利用すると、カレンダーやスライダーといった複雑な機能を持つ部品を簡単に導入することが出来るという。また、マイクロソフトでは、Microsoft Ajax CDN(Content Delivery Network)というものも提供しており、これはajax.microsoft.comで様々なスクリプトをホストするサービスで、自社サーバー内にjQueryなどのライブラリを置く必要がなくなり、サーバー負荷が減るというもの。Googleが提供するGoogle AJAX Libraries APIと似た系統のサービスと考えるとわかりやすいだろう。
3種類目となるフレームワーク「ASP.NET MVC」。これは個人的には今回のハイライトだったと考えている。MVCというのは、Webアプリケーションの構築手法のひとつで、Model(モデル)とView(ビュー)とController(コントローラー)といった3つの構造に分けて作る事で、メンテナンス性や拡張性を高めることができる。Modelは、データや業務処理などを担当し、Viewがサーバーの外に出力されるアウトプット(例えばWebページなど)を担当する。また、Controllerは、ViewとModelを制御したりユーザーからの入力を担当する。ASP.NET MVCでも、プロジェクトパネル上でもModelとViewとControllerでフォルダが分かれている。そのほか、ヘルパーを格納するHelperといったなじみのあるフォルダもあり、これはViewのHTMLの生成に役立つ関数群で、リンクやフォームなどを簡単に生成できるものである。
MVCを取り入れたフレームワークでよく使われているURLルーティングについても、ASP.NET MVCやWebフォームでサポートするとのことだ。URLルーティングというのは、物理的な配置パスに依存しないURLの生成方法で、例えば、『http:/hoge.hoge/Index.aspx?category=car』を『http:/hoge.hoge/Car/List』のようにすっきりさせることが可能となっている。
MVCを用いたフレームワークは、RubyのRuby on Railsをはじめ、PHPのCakePHP、PerlのCatalyst、PythonのDjango、JavaのPlay!など様々存在するが、こういった中にASP.NET MVCが加わったというイメージだ。ASP.NET MVC 1.0は2009年4月にリリースされ、ASP.NET MVC 2.0は2009年10月にβ版をリリースしたばかりとのことなので、今から取り組むには旬なフレームワークといえるだろう。ASP.NET MVCも追加コンポーネントの導入は必要だがASP.NET MVCで開発が可能とのことだ。
マイクロソフトが提供する、お役立ちツール群を紹介
続いて、Webプラットフォームポータルの紹介。Webプラットフォームポータルは、マイクロソフトのWebサイト開発における製品とサポートのポータルサイトだが、その中で「Microsoft Web Platform Installer 2.0」というソフトがダウンロード出来る。これは、難しい環境構築なしで、オープンソースのWebアプリケーションを利用出来るようにするもので、例えばWordPressやSilverStripeといったCMSなど、様々なソフトが導入できる。これらのWebアプリケーションをWindowsでインストールして使ってみたいユーザーには、とても役に立つソフトといえる。
またセミナーの最後にマイクロソフトのデベロッパー&プラットフォーム統括本部・オーディエンスマーケティングマネージャの金尾 卓文氏がWebsiteSparkを紹介した。WebsiteSparkは、今回のセミナーのタイトルにもなっているマイクロソフトのプログラム。このプログラムに参加すると、「Visual Studio 2008 Professional Edition」、「Expression Studio」などの製品やサポートがWeb制作や開発業務を中心にビジネスを展開している従業員数25名以下の企業を対象に、最大3年間すべて無償で提供されるというもの。対象者にとってはかなりメリットが大きいといえるだろう。ただし、開業間もないスタートアップ企業の支援を目的とした「BizSpark」に既に参加している人は使えないとのことだ。現在、マイコミジャーナル経由で応募すると、10組中1組に『Web制作会社年鑑2010』がプレゼントされるとのことなので、興味がある人は、応募してみるのもいいだろう。