「うれしい悲鳴」とグーグル関係者が言うように、Google版IME(文字入力システム)『Google 日本語入力(ベータ版)』が12月3日の公開以来大きな反響を呼んでいる。グーグルは7日、老舗IMEとはひと味違う変換を実現した本ツールについて、開発経緯と今後に関する説明を行なった。

Google 日本語入力の開発者のひとり、同社ソフトウェアエンジニアの工藤拓氏は、その着想を自身が担当していた「もしかして」機能から得た。検索クエリの間違いを修正する実用性の高い機能だが、そもそもユーザが不正確なクエリを入力してしまう原因には「既存のIMEの誤変換」があったという。とくに芸能人名や商品名など新しい語句の変換に弱かった。工藤氏が注目したのは、そうした既存IMEの誤変換を、もしかして機能が効果的に修正していた点だ。この修正機能を活かして「日本語入力を作ったら、絶対に便利になると確信して開発に至った」。

Google 日本語入力は、工藤拓氏(左)と小松弘幸氏の20%プロジェクトから生まれた。

以降、工藤氏は、業務時間の20%を個人業務に割り当てられる"20%プロジェクト"ルールを利用し、同じくソフトウェアエンジニアの小松弘幸氏とともに日本語入力ツールに取り組んできた。数カ月に及ぶデザインディスカッションを経て、他のIMEを手がけた経験を持つエンジニアたちも開発に参加。辞書の作成にあたり、Webページの膨大なクロールデータが自動処理され、人手では収集不可能な数の用語を網羅、同社の分散並列計算システム「MapReduce」なども活用した。工藤氏は、そうして完成したGoogle 日本語入力を「Webのありのままを反映した変換エンジン」と呼ぶ。

新語や独特なネット用語に強く、豊富な語彙数で口語文体でも正確に変換しやすい。サジェスト(推測候補)機能は効率的な文章作成に便利。Google 日本語入力の概要も評判もそんなところだろう。Microsoft IMEやATOKなどの老舗IMEとはひと味違う変換が実現されている。同社は今後のスケジュールとして、64bit版を熱望する声には近日中のリリースで応えたいとしたほか、できるだけ早い時期に正式版リリースを、との意気込みも語っている。誤用単語などへの対策も含め、変換辞書の更新はプログラムアップデートで行なっていく。

Google版IMEはWebアプリの重要なコンポーネント

及川卓也 グーグル シニアエンジニアリングマネージャ

現在、Google 日本語入力はフルタイムプロジェクトとして開発されており、同社サービスにとっても重要な位置を占めていくことになる。シニアエンジニアリングマネージャの及川卓也氏は、日本語など非英語圏のユーザにとってIMEは「Webアプリケーションをより良くするために重要なコンポーネント」と位置づけ、Google 日本語入力を皮切りに、これまで遅れていたIMEを改善していくと説明した。既存の他社製IMEとの競合も気になるところだが、その点についてグーグルは「新しい日本語入力のあり方やアプローチを提示することで、マーケットが活性化するのではないか」とした。

Google 日本語入力は、同社が先日発表したOS「Google Chrome OS」にも盛り込まれる。同OSはLinuxベースのオープンソースOSとなっており、IMEのChrome OS対応部分についてはオープンソース化していく。