三洋半導体は12月8日、ポータブルオーディオ機器に向けハードワイヤード方式でMP3エンコーダ/デコーダを内蔵し、消費電力5mAとリニアPCM対応による高音質化を両立した音声処理LSI「LC823491」を開発したことを発表した。2009年12月よりサンプル出荷を開始。サンプル価格は2000円で、量産時の規模は月産5万個を計画している。
ICレコーダーで一般的に使用されている圧縮フォーマットはMP3(MPEG-1/2/2.5 Layer3)だが、エンコード/デコード時に高速フーリエ変換などの複雑な演算処理が必要で、DSP上のソフトウェアで実行した場合、LSIの消費電力が増大し電池駆動時間が短くなってしまうという課題があった。
同製品は、新規に開発したMP3エンコーダを採用することで、エンコーダ部の消費電力を従来品比で50%削減(動作周波数を1/2化)した。また、1.0V動作が可能な90nm LP(低電圧)プロセスを採用、MP3録音/再生時のLSI全体の消費電力約5mWを実現、従来品比で約30%の削減を達成した。
また、ハードワイヤード方式のWMAデコーダも内蔵、WMAを再生する場合にも低消費電力を実現可能となっている。なお、MP3エンコーダはMP3デコーダ(WMAデコーダなども含む)との同時動作が可能で、録音と同時に後追いでの再生に対応している。
このほか、24bit/96kHzのリニアPCM対応を実現。新規開発した 6バンドイコライザ/高域補正回路およびサンプリングレートコンバータ/サラウンド処理などの主要なオーディオ処理機能をすべてハードワイヤード方式で実装、90nm LPプロセスと組み合わせることで、24bit/96kHzリニアPCM動作時の消費電力を、従来品の16bit/48kHzリニアPCM動作時と比較して、データ処理量としては3倍増にもかかわらず、電力消費を1.5倍程度に抑えることに成功している。
さらに、その他の主要機能を1チップに内蔵いるため、 NOR/NAND型フラッシュメモリなどのメモリデバイス、マイク/A/Dコンバータ/D/Aコンバータなどの音声入出力デバイス、LCDなどの表示デバイス、および電源回路を追加するだけで、ICレコーダの基本的な機能を実現することが可能となる。
なお、リニアPCM対応のためにはデータバッファ用に最大数百KBのメモリが必要だが、これに対応するために16Mbitもしくは64MbitのSDRAMをMCPで内蔵しているため、外付けメモリなしでリニアPCM機能を実現可能だ。また、同SDRAMは高音質対応のためにARM9で各種音響効果を施す際のワークメモリとしての用途や、プログラムメモリとして使用することでARM9の高速プログラム実行を実現することも可能となっている。