パナソニックは、GaNを用いたインバータICを開発したことを明らかにした。米国で12月7日より開催されている半導体国際学会(International Electron Devices Meeting:IEDM)において発表する。

開発されたGaNパワートランジスタを用いたインバータIC

同ICは、チップ内部で独自開発のノーマリオフ型の横型GaNトランジスタ(Gate Injection Transistor:GIT)を6個搭載し、電気的に絶縁することで、1チップでのインバータ動作を実現。これにより、従来の複数個のチップを用いたSi系インバータICに比べ、低損失で高速なスイッチングの実現が可能となる。

GaNの結晶成長にはSi基板を採用。従来用いられてきたSiCやサファイア基板に比べ、大口径化が可能で、かつ入手が容易であるため、コストの低減が可能となっている。

また、横型であるGaNトランジスタは高抵抗GaN下地層の上に形成されているため、集積化したそれぞれのGaNトランジスタ間で十分な素子間分離耐圧を維持できれば独立して駆動することが可能となる。開発されたインバータICではFeイオンによる素子分離技術を採用することで、900Vの素子間耐圧を実現した。これにより6個のトランジスタが独立に駆動できるインバータICの動作が可能となった。

このため、従来のIGBTのようにオフセット電圧が生じることなく、オン抵抗による損失を低減すると共に、集積化により寄生インダクタンスが低減でき、高速スイッチングが可能となる。結果として、オン動作時およびスイッチング時の損失を低減でき、高効率なモータ駆動が可能となった。

性能としては、オン抵抗が2.0mΩcm2、オフ耐圧700V、インバータ変換損失を42%低減(20W出力時 変換損失4.8%、従来のIGBTは 8.3%)、基板材料コストはSiC基板と比較して1/100以下に低減可能となっている。