グーグルに訊く『Google Insights for Search』の使い方
・1限目 - データを正しく読むための注意点
・2限目 - 検索条件と結果の読み方
『Google Insights for Search』についての特別講義、1限目・2限目では基本的な機能やグラフの読み方について学んだ。最終回となる3限目では、具体的にマーケティングや広告キャンペーンの計画に役立つ活用法を聞く。
Google Insightsをマーケティングに活用する
――Google Insightsで見ることができる色々なデータは、どのように活用すればいいのでしょうか?
調べる人が何を求めるかによりますが、例えばこんな活用法があります。
■事例1. 旅行会社が見る「検索ボリュームの周期性とキャンペーン」
毎年5月のゴールデンウィーク(大型連休)には多くの人が旅行に出かけます。その需要を狙ってアドワーズでキャンペーンを設定するなら、いつが最適でしょうか?
※詳細を確認する場合は、グラフ内の「Google Insights for Search で完全なレポートを表示」をクリックしてください。(以下同様)
これは"ゴールデンウィーク海外+GW海外"と"ゴールデンウィーク国内+GW国内"を旅行カテゴリで比較したものです。毎年連休直前の4月にピークがありますが、"海外"については年明けにも小さなピークがあることがわかります。パスポートなど様々な手配が必要な海外旅行は、年明け頃に何かを探す傾向があると考えられます。
このことこから、旅行会社が海外旅行向けのキャンペーンを行うなら、1月に始めるとより取りこぼしがない、ということが言えます。また比較基準を「期間」にして比較すれば、年ごとの人気クエリの傾向も参考になるかもしれません。
■事例2. 小売業が見る「商品の注目度と販売戦略」
あるクエリの検索ボリュームが増えているということは、それに対する関心が高まっていることの現れだと考えられます。それは、現実の消費行動にも反映されます。
これは最近の"発泡酒"と"ノンアルコールビール"の検索ボリュームの比較です。もともとある程度のボリュームを持つ"発泡酒"に対して、急に"ノンアルコールビール"のピークが来ています。これはある新製品が発売された時期と重なっていて、「注目クエリ」でもその新商品の検索ボリュームが増えていることがわかります。
飲食業や小売店なら、ノンアルコールビールの注目度が高いと判断して店頭でプッシュしたり在庫調整の参考にするなど、オンラインだけでなくオフラインの販売戦略にも役立てることができます。
■事例3. マーケティングに見る「マーケティングメッセージの検討」
小型で低価格のノートPCが人気を集めていますが、今後それをPRしていくにはどんな言葉を使うのが最適なのでしょうか。
これまでに言われてきた様々な名称の検索ボリュームを比較してみました。時間による変化を見ると、2008年前半頃までは"UMPC"が主流で、一部"100円パソコン"も増えた時期が見られますが、2008年末からは"ネットブック"が多数派となっています。このことから、現在は"ネットブック"という言葉が該当する商品を示す言葉として浸透してることがわかります。
つまり"ネットブック"が最も商品のイメージと結びつきやすく、また検索されやすいと推測できるため、マーケティング的には販売や商品説明に使う言葉として"ネットブック"が適切だと考えられます。
■事例4. 仕掛け人が見る「キャンペーンの効果測定」
クロスメディアの広告キャンペーンやメディアが採り上げる流行について、一般の人はどのように反応しているのでしょうか?
今年流行した言葉"婚活"は、ドラマ"婚カツ"の影響によりボリュームが増えていることがわかります。また、「Google Insights for Search で完全なレポートを表示」をクリックして詳細を確認すると、これらのクエリに関連して「婚活ブログ」や「婚活パーティー」なども注目されているようです。
レポート詳細ではこのほか、昨年の流行語"アラフォー"では、人気検索クエリに"アラフォーとは"という言葉があることが確認できます。「○○とは」というのは、その言葉の意味を知りたいときによく使われる方法であることから、ここではまだ意味が浸透していないということが推測されます。その言葉の仕掛け人としては、新たなアプローチを考えたり、意味を理解してもらう手段を講じる必要があると判断できるわけですね。
このように、ネット上のコンテンツだけでなく、テレビや雑誌等のメディア、ポスターや店頭も含めたオフラインのキャンペーンについても、それに興味を持った人の反応を(これが全てではありませんが)見ることができます。
検索ボリュームから見る世相いろいろ
――Google Insightsを活用するためのコツはありますか?
ミソは、どのようにクエリを設定するかという点です。先の旅行の例では"ゴールデンウィーク"と"GW"など、ユーザーの気分になって、求めるものに対して使われそうな要素をプラスしていきます。反対に、"アラフォー"に対して"R35"を調べるときは、"GT-R" "スカイライン"などをマイナスすることでノイズを除きます。ただし、あまり細かく設定しすぎるとサンプリングができないので注意が必要です。
この中で何かしら気になる点を見つけたら、それを地域別・期間別などで深掘りしていくことで傾向を探ります。逆にボリュームの変動を見て、その原因をニュースや世の中の流れなどから推察することがもきます。
また、ある商品名に対して「人気検索クエリ」や「注目検索クエリ」に挙がった言葉からどのようなイメージを持たれているか推測したり、別のモノとの関連性を見つけることもできます。実際に使ってみて、いろいろな遊びをやってみると分かってくると思いますよ。
――ありがとうございました。
講師 : 水谷嘉仁 Google プロダクト スペシャリスト
1998年に早稲田大学を卒業後、NI系企業のネットワークエンジニア、SCM系ソフトウェア企業のアカウントマネージャー、セキュリティ系企業のプロダクトマーケティングマネージャー、システム運用系企業の社長室長を経て、08年5月よりGoogleに入社し現在に至る。