国立天文台、ドイツ・マックスプランク研究所などの研究者からなる研究チームは、すばる望遠鏡に搭載された新コロナグラフ撮像装置「HiCIAO」を用いて、太陽型星を周回する惑星候補天体を直接撮像により発見したことを明らかにした。

ナスミス焦点に設置されたHiCIAOの画像。左の黒い巨大な箱が補償光学装置(AO188)。中央の黒い部分が常温光学系、右の青い部分には低温光学系および検出器系が冷却・内蔵されている(赤外線カメラ)。望遠鏡からの光は左側から入り、光学系を経て、検出器上に結像される

HiCIAOの概念図。従来のコロナグラフのほか、差分光学系により大気揺らぎによる星像ノイズの低減機構、世界最大級(2048×2048素子)の赤外線アレイ検出器、地上天文装置で初となるASIC検出器制御系(IC化された検出器コントローラ)を備えた赤外線観測装置

系外惑星の直接撮像観測へのアプローチは近年競争が激化していたが、太陽のようなG型星の近傍(太陽系の大きさ程度)を周回する惑星候補天体の撮像の報告はこれまでなかった。

今回、国立天文台を中心とする日本チームは、独・米の国際チームとともに、こと座の方向、地球から50光年離れたG型星(GJ758)を周回する惑星候補「GJ758B」を直接撮像観測により発見した。温度は絶対温度600K(約330℃)程度と推定され、これまでに撮像されたG型星の伴星天体の温度としては最低記録となる。

GJ758Bの主星からの距離は29AUで、ほぼ海王星の軌道半径と同じ、すなわち、太陽系とほぼ同じサイズの惑星系となる。惑星の質量は明るさと年齢から推定されるが、主星であるGJ758の年齢がはっきり決まらないため、推定される質量にも幅があり、年齢が7億年の場合には木星質量の約10倍となり、巨大惑星候補と呼ぶことができる。また、誤差の範囲で最も高い年齢(87億年)をとった場合には40木星質量程度となる。

GJ758と太陽系天体の大きさの比較。惑星候補天体GJ758Bは摂氏330℃程度なので、熱放射で赤黒っぽく見えると考えられている。その直径も木星とほぼ同じと予想される

また研究チームは、もう1つ、GJ758Bとほぼ同じ質量で、さらに内側(18AU:ほぼ天王星の軌道)にある「GJ758C」も発見している。このため、同惑星候補は固有運動のチェックが必要とするが、(少なくとも)2惑星から成る惑星系である可能性があると研究チームではしている。

HiCIAOで撮像された太陽型星GJ758の惑星候補天体(BとC)の画像(2009年8月の観測データ。主星の明るい光はコロナグラフ技術により取り除かれている。観測波長は近赤外線。 惑星候補天体Bについては、この恒星に付随している天体であることが確認されているが、Cについては今後の追観測が必要となっている)

GJ758の天球上での位置(主星は、こと座の方向、約50光年の距離にある太陽型の恒星)

すばる望遠鏡では、HiCIAOと補償光学装置を用いた戦略的観測プログラム「SEEDS(シーズ)」が2009年10月より開始されており、今回の成果にも威力を発揮している。同プログラムにより、今後5年間にわたって約500個の(主に太陽型の)恒星を周回する惑星や円盤が探査される計画。

同研究チームでは、"直接観測"により数多くの惑星候補天体を発見することで、「太陽系に似た惑星系は普遍的かどうか」を解明することにつながるとしているほか、惑星の誕生現場である原始惑星系円盤から惑星が誕生する過程も解明することができると期待している。なお、同プロジェクトは、日米独英の多国間国際協力により進められている。