サッポロビールは12月3日、岡山大学とロシア科学アカデミーの共同研究により5ヵ月間宇宙空間に滞在した大麦の子孫で醸造したビール「サッポロ スペースバーレイ」を数量限定でチャリティ販売することを発表した。
同ビールの原料は、2006年に5ヵ月間宇宙空間に滞在した同社開発の大麦「はるな二条」の第4世代に当たる子孫。
取締役常務 生産技術本部長の市川誠一郎氏は、「今回、量が限られた原料を用いるため失敗が許されないという状況の下、緊張感をもって製造に臨んだ。また、少量の原料を手作りで醸造したということで手間もかかった。ここまでして、当社が宇宙研究に取り組むのは、世界で唯一大麦とホップの育種・研究機関を持つなど原料にこだわっているとともに、独自の社会貢献を展開したいから」と説明した。
同製品は250セット(1セット330mlワンウェイボトル6本入り)の数量限定販売。売上は岡山大学を通じて、児童の科学教育の促進と日本・ロシアの宇宙科学研究の発展に活用される。
同社は宇宙大麦ビールの製品化にあたり、原料と商品の両レベルにおいて安全性を確認した。同氏は、「宇宙で保存したものが地球でも変化がない、つまり同じ品質であるということは、宇宙での食糧調達への大きな一歩。当社のロゴの星印を見て、"宇宙と言えばサッポロ"というイメージを作っていきたい」と、これからも宇宙研究に取り組んでいくことをアピールした。
発表会には、大麦の宇宙研究に取り組んでいる岡山大学資源生物化学研究所の准教授、杉本学氏も列席した。
杉本氏は、同氏の研究において、「宇宙で種子が保存できるか」また「保存した種子を宇宙で栽培し収穫できるか」ということをテーマとしているが、サッポロビールの大麦の宇宙研究によって前者が証明されたと説明した。
「昨年、大麦の宇宙ステーション内での栽培にも成功した。非常によく育ち、25cmほどの栽培装置から葉がはみだすほどだった」
杉本氏は、「宇宙ステーション内での大麦の栽培には成功したが、船外環境で可能かどうかはまだわからず、現在実験中。種子のセットを3つ作って2つまで回収が済んでおり、来年1月最後のセットを回収する予定だ。これにより、また船外環境が種子に及ぼす影響について明らかになる」と述べた。
発表会では、サッポロ スペースバーレイと宇宙大麦で作られた麦茶が試飲用として配布された。「宇宙をイメージさせるやや濃い目の色合い」ということで、色は麦茶と間違えるくらい濃い茶色。味は焙煎麦芽を用いているということで、香ばしかった。最後には、同社の2010年の新たなイメージガールも登場した。