小誌でもお伝えしたが、Salesforce.comは同社のカンファレンス「Dreamforce '09」で、同社のアプリケーション上でTwitterとFacebookが利用可能なコラボレーション・アプリケーション「Salesforce Chatter」(以下、Chatter)を発表した。
企業向けアプリケーションと旬のコンシューマー向けアプリケーションが融合したということで、業界に与えるインパクトは小さくないだろう。ここでは、同社のProducts and Marketing担当Executive Vice Presidentを務めるGeorge Hu氏に、同アプリケーションが業界に対し、どのようなインパクトをもたらすかについて話を聞いた。
-今日、若年層はメールではなくソーシャルメディアを利用しており、また、Salesforce Chatterはメールを使わずにコミュニケーションが可能だ。将来、メールはなくなるのだろうか?--
Hu氏: メールで情報をやり取りする際は自分から働きかけなければいけないが、FacebookやTwitterは違う。例えば、当社の社員がCEOであるMarcにメールを送るとなると気後れするだろう。しかしChatterなら、売上TOP10の企業をサポートしているグループなどの情報が自動的にMarcへ送られる。また、FacebookやTwitterではデータが管理しやすく、メールよりも使いやすいと言える。
パートナーであるBluewolfのCEOもChatterを非常に気に入っていると聞いている。同社では、トップダウンとボトムアップの両方からChatterが普及するだろう。こうした動きを見ていると、メールがなくなる日がやってきてもおかしくないと思える。
-Chatterが登場したことによって、メールのほかに、消えてしまう製品はあるだろうか?--
Hu氏: IBMのLotus/NotesやMicrosoftのSharepointは何も変わっておらず、もはや死んでいるアプリケーションだ。このようなユーザーに情報を見つけさせるコラボレーション・アプリケーションは、今後なくなるだろう。
--これまでGoogleはコンシューマーベンダー、Salesforceはエンタープライズベンダーとして棲み分けてきたが、今回Salesforce Chatterを発表したことで、競合するのではないか?--
Hu氏: それはない。なぜなら、GoogleはGoogle AppsやGoogle Mapsといったコンシューマー向けのアプリケーションを収入源としている。一方、当社はCRMといった企業向けのアプリケーションが主な収入源であり、Googleはこれらを取り扱っていないからだ。また、Chatterは企業のアプリケーション、データとつながっている点で、コンシューマー向けのコラボレーションツールとは異なるのだ。
--FacebookやTwitterはChatterに対して競合という意識はないのか?--
Hu氏: 17日の基調講演にTwitterのCEOである氏が登場したように、彼らはChatterを競合と見なすどころか歓迎している。というのも、Facebook/TwitterとChatterのファンダメンタルは同じだが、ミッションは違うからだ。
Facebook/Twitterは情報を巨大な単一のデータベースにパブリックな形で記録していく。これに対し、Chatterはセキュアなデータベースに企業の中で起こっていることだけを記録していく。ChatterのデータベースはFacebook/Twitterのデータベースの一部とも言える。
--OracleやSAPといった競合がChatterと同じようなアプリケーションを出してくる可能性はあるか?--
Hu氏: OracleとSAPは過去にとらわれているので、イノベーションは行わない。彼らのビジネスは製品のコストの22%というメンテナンス料による収入で成立しており、イノベーションを行ってしまうと、これらが得られなくなる。つまり、彼らは恐竜のような過去のシステムにしがみつかなければやっていけないのだ。
--FacebookとTwitterを利用している層を踏まえると、Chatterが受け入れられる年代や業種が制限されそうだが--
Hu氏: 確かに、当社がSFAの販売をスタートした時、新しいものに抵抗がなく、積極的に取り入れるハイテク産業から始まった。ただし、Chatterはこれまでの技術と異なり、新技術ながら人々の反応がいい。
また当社としては、Chatterを提供するに際して2つのことを前提としている。1つは、「FacebookやTwitterは操作が簡単なので、利用にあたって訓練がいらない」ということだ。もう1つは、「未来の技術を提供したい」ということだ。仮に、企業を辞めていく人たちがFacebookやTwitterを使えないとしても、これから企業に入ってくる若い人たちはそれらをすでに使っている。今、企業にいる人たちしか見ていないOracleやMicrosoftと、われわれは向かっている方向が違うのだ。