米Microsoftは11月17日(現地時間)、現在米カリフォルニア州ロサンゼルスで開催されている開発者会議「PDC09」において、「Windows Azure」プラットフォームの提供開始ならびに、その詳細について発表した。なお正式版としての運用は2010年1月1日より行われ、2月1日より課金サービスとして提供が開始される。

MSがWindows Azureで進める2種類のアプローチ

米Microsoftチーフソフトウェアアーキテクト(CSA)のRay Ozzie氏

Windows Azureはクラウド型サービスの1種で、同プラットフォーム上にユーザーはプログラムやデータを置いて、ネットワーク経由で自由にアクセスできる。マルチテナントとホスティングによる低コストと展開のしやすさに加え、スケーラブルで高い可用性という柔軟性の高い運用が実現できる。PDCで基調講演を行った米Microsoftチーフソフトウェアアーキテクト(CSA)のRay Ozzie氏によれば、3種類のスクリーン(PC、携帯、TV)と1つのクラウドを結ぶ、同社の「3スクリーン戦略」のコアとなる技術だという。

同社はWindows Azureで、従来型のソフトウェア販売を行う「On-Premise (オンプレミス)」とデータセンター上にすべてのデータとプログラムを配置する「クラウド」型の2種類のアプローチを組み合わせた手法をとっており、この点で先行するGoogleやAmazon.com、Salesforce.comなどと異なる。クラウド型プラットフォームとしてはWindows Azureを提供し、オンプレミス向けにはWindows Server 2008 R2を提供する。このように用途別に2種類のソフトウェアスタックを用意しており、クラウド向けのデータベース製品としては「SQL Azure」が用意される。

オンプレミスとクラウドで2種類の異なるソフトウェアスタックが用意される

今回のPDCで発表されたAzure関連のアップデートとしては、パートナー企業がクラウド向けアプリケーションの売買を可能にするマーケットプレイスの「Microsoft Pinpoint」、そしてPinpointを通して提供されるデータサービス「Dallas (開発コード名)」がある。

PinpointはSalesforce.comにおけるAppExchangeのようなもので、アプリケーションの早期展開ならびに、パートナーのための新たなビジネスチャンスの提供を意味する。DallasはNASAの天文データやinfoUSA.comのニュース/統計データなど、有料/無料を問わずに各種データをクラウドを通して参照可能にするサービスで、Ozzie氏によれば「Data as a Service」を提供するものだという。やはりこちらも同種のサービスをAmazon.comが提供している。Dallasについては、発表同日よりCTP (Community Technology Preview)の限定版が利用可能となっている。

アプリケーションの可用性とスケーラビリティを向上する「AppFabric」

そして今回の発表の目玉となるのが、新たに提供が発表された「Windows Server AppFabric」と「Windows Azure platform AppFabric」の2つだ。内容としてはアプリケーションサービスを構成する層に位置しており、前述のオンプレミスとクラウドの2軸体制に合わせて2種類の形態で製品が用意されている。

AppFabricについて公開されている情報が少ないため、現時点で不明な点が多いが、PDCで説明を行った米Microsoftのサーバ&ツールビジネス部門プレジデントのBob Muglia氏によれば「ユーザーの要求に応じて既存のアプリケーションを自在にスケールアウトし、さらにキャッシュ技術で高速動作を可能にするアプリケーション・プラットフォーム」だという。

その実態は複数の製品やプロジェクトを組み合わせたミドルウェア製品の集合体で、スケーラビリティと可用性を向上させるSOAPベースのワークフロー技術「Dublin」(開発コード名)、オンプレミス/クラウド問わずに接続性を向上させるサービスバスとアクセス制御技術「.NET Services」、インメモリ・キャッシュで分散システムのレスポンスを向上させる「Velocity」(開発コード名)を組み合わせたものとなっている。Dublinと.NET ServicesはBizTalk Serverの拡張だと考えればいいだろう。

新製品「AppFabric」

壇上のデモでは同技術を利用したアプリケーションのレスポンスタイムが大幅に向上する様子が紹介されている。

なお、AppFabricについては現在ベータ1版の公開が行われている。CTPということで一部ユーザー限定のベータテストだが、今後長期にわたるユーザーを対象にしたテスト期間を経て、2010年末までに正式版がリリースされる計画だ。