東京・六本木の森アーツセンターギャラリーにて、「ヴァン クリーフ&アーペル『ザ スピリット オブ ビューティー展~時空を超える美の真髄』」が開催されている。"日本で一番最初にブティックを構えたフランスのジュエラー"といわれるヴァン クリーフ&アーペルによる、100年の歴史を振り返る日本初の展覧会だ。そこには、メゾン所蔵のアーカイブコレクションをはじめ、フランス国内外から集められた貴重なプライベートコレクションなど、およそ300点以上のジュエリー・ウォッチファッション小物・芸術的オブジェが公開されている。その一部を紹介しよう。
六本木ヒルズ森タワー52階の森アーツセンターギャラリー会場は、「魔法のおとぎ話の世界を旅する」というコンセプトのもと、テーマ別に4つのエリアに分かれている。なお、このデザインを担当したのは、フランス人建築デザイナー・パトリック・ジュアン氏。
自然をモチーフにしたデザイン
ここでは「自然のスピリット」というテーマに沿い、蝶や小鳥、花といった生き物たちをモチーフにしたジュエリーが展示されている。「ハチドリと花のミノディエール」は、エジプトのナザリ王妃の特別注文により製作されたもの。ミノディエールとは手のひらサイズの小さなバッグなどのことをいう。巧妙なテクニックと美しいビジュアルの両方で魅了させるミステリー・セッティングは、ヴァン クリーフ&アーベルの真骨頂とも言える技術だという。
「ハチドリと花のミノディエール」(ミステリー・セッティング 1938年)
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「リーフウォッチ」(1950年前後) |
「パピヨンクリップ」(2004年) |
「妖精クリップ」(1940年前後) |
「シャクヤクの花のクリップ(ミステリー・セッティング)」(1937年) |
「クリストードネージュ(雪の結晶)クリップ」(1948年) |
機能美を追求したデザイン
「自然のスピリット」の次は「エレガンスのスピリット」。ここではミノディエールに注目したい。劇場、オペラ、カクテル、ディナーなど、夜の外出時に必要な、腕時計や口紅、メイク用品、ダンスカードなどを収納するミノディエール。このカール ミノディエールは、内側に鏡が付き、こっそりと髪や化粧を直すときに重宝する。多くのコンパートメントを備えているのも特徴的な作品だ。
「ヴァンドーム広場のシガレットケース」(1946年) |
「白鳥の湖 コンパクト」(1947年) |
異国文化にインスパイアされたデザイン
続いては「冒険のスピリット」。ここでは、ペルシャ、エジプト、日本など、異国の夢にインスパイアされて生まれたジュエリーやオブジェなどが展示されている。1920年代、ヴァン クリーフ&アーベルは、エジプトやインドの影響を強く受け、中国や日本の宗教的シンボルにインスパイアされたデザインのアイテムも登場した。そのなかでも、ブッダのクリップは、瞑想中のブッダをモチーフとし、レッドコーラルを彫刻。土台と髪飾りはハスの花を形象化したデザインで、エメラルド・ルビー・ダイヤモンドがあしらわれている。
「ブッダのクリップ」(1927年) |
「日本の海岸を描いたバニティケース」(1925年)、「中世風のバニティケース」(1925年)、「ルトランブルー(青い列車)バニティケース」(1931年) |
歴代のセレブたちが愛したデザイン
そして最後は「インカーネーション(美の化身)」。生き方とファッションでひとつのスタイルを確立したセレブリティたちがテーマのフロアだ。社交界、上流階級、王侯貴族階級などに属する世界的に有名な女性たちが、華やかな晩餐会やセレモニーなどで身につけたヴァン クリーフ&アーベルの品々が展示されている。
「グレース王妃が着用したティアラ」は女優のグレース・ケリーが1956年にモナコのレーニエ大公と結婚するのに先立ち、1955年にモナコ公国からヴァン クリーフ&アーベルに婚約用のジュエリーの製作を依頼。このころからグレース王妃とヴァン クリーフ&アーベルの親密な関係がはじまったという。このティアラはそれから20年の時を経て製作された1976年のもの。「パンカ ネックレス」は、宝石の組み合わせとネックレスの形状がインド風な印象。イエローゴールドを土台とし、ラウンド&オーバルシェイプのターコイズカボションとブリリアントダイヤモンドがマウントされている。2009年、女優のエヴァ・メンデスがこのネックレスを着用し、ゴールデングローブ賞授賞式に登場した。
さて、駆け足で4つのテーマをまわってきたが、ここで紹介したジュエリーは展示品のごく一部に過ぎない。この機会にぜひ、魅惑的なデザインと美しさを持つ宝石たちの姿に触れてほしい。
「ヴァン クリーフ&アーペル『ザ スピリット オブ ビューティー展~時空を超える美の真髄』」は2010年1月17日まで開催。開館時間は10:00~20:00(入館は閉館の30分前まで)。入館料は一般が1200円、学生(高校生・大学生)が1000円、4歳から中学生が500円となっている。