日立製作所は、従来の試作機に比べ本体サイズを約1/10にしたシートナノインプリント装置を開発したことを発表した。
今回開発された小型シートナノインプリント装置 |
同装置のサイズは860mm×800mm×720mmで、研究開発用途での使用が想定されている。評価用のデモ実験の受付を2009年12月から、販売は2010年4月からをそれぞれ予定している。同装置の製造は日立産機システムが、販売は日立製作所と日立産機がそれぞれ担当する。
ナノインプリントは、凹凸のパターンを形成したモールド(型)を、基板に押し当てパターンを転写することで極微小な構造体を成形する加工技術。HDDや半導体などのパターン形成の開発にも応用されている。シートナノインプリントは熱ナノインプリント方式の1つで、微細な凹凸パターンのあるベルト状のナノ金型を用いることにより、加熱、加圧、冷却およびシートとナノ金型の剥離といった一連の加工工程を連続して行うことができるのが特長。このため、これらの加工工程を逐次行う従来のナノインプリントと比べ、生産性の向上が見込める技術として期待されている。
これまで日立は、2005年から2年間、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「ナノテク・先端部材実用化研究開発」の一環として、シートナノインプリント装置の試作機を開発、その後もシートナノインプリント技術の開発を続け、2006年に従来機となる試作機を開発していた。今回、同試作機を改良し、本体サイズを約1/10に小型化することに成功した。
新たに開発されたシートナノインプリント装置は、従来の試作機と比べ約半分の長さ(周長1m)のベルト状のナノ金型と、上下に2本ずつ配置される加熱・加圧ロールおよび剥離ロールで構成されている。ベルト状のナノ金型の長さを縮め、ロール駆動機構を大幅に見直し再設計したことで小型化を実現したほか、加熱と加圧を一体化したロールを採用したことによる予備加熱機構を設置、被成型体を加圧する前にナノ金型の表面温度を上昇させておくことができ、転写速度を向上させることが可能となった。
さらに、加熱・加圧されたシートを十分に冷やす冷却機構を搭載することにより、シートの熱変形を抑制、成形精度を向上させることができる。なお、装置の操作は、7.5型のタッチパネル式LCDモニタを採用している。