マイクロソフトの基礎研究機関である「マイクロソフトリサーチ(Microsoft Research、MSR)」が、日本のアカデミック分野との連携を強化する。同社は4日、『マイクロソフトリサーチ アカデミック連携プログラム』(英語プログラム名:Mt. Fuji Plan)を発表した。共同研究・人材育成・学術交流・カリキュラム開発を軸に、3カ年計画で数百万ドルを投資するとしている。

写真左から、MSRアジア(中国・北京)所長 洪小文(シァオウェン・ホン)氏、MSR担当 シニアバイスプレジデント リック・ラシッド氏、マイクロソフト日本法人 代表取締役社長 樋口泰行氏

同社が年間に投じる研究開発費は約1兆円。その基礎研究部門として中核を担うのが1991年に設立されたMSRだ。コンピュータサイエンス分野で世界トップクラスの研究機関であり、世界6拠点の研究所に850名以上の研究者が在籍している。MSRが発表する数々の最先端研究の成果は、マイクロソフト製品や社会的課題へのソリューションなどに転用されてきた。一方で産学連携にも意欲を見せている。日本のアカデミック界とも、2005年の「マイクロソフト産学連携研究機構」設立を契機に連携をスタート。情報学系研究者の人材育成を目的に、各種研究支援、フェローシップによる奨学金、MSRアジアへのインターンシップなど実施してきた。MSR アカデミック連携プログラムはその流れを強化し、「日本のイノベーションの創出に貢献」(樋口泰行 代表取締役社長)するものとなる。

樋口社長は、日本の研究開発分野が世界とくらべて「文化的、言語的に距離感」があるとし、今後は「優秀な日本の技術者が世界に共通するプラットフォームで活躍できることが重要になる」と説明。その支援策として同プログラムで実践される内容は以下のとおり。

MSRのCORE連携研究プロジェクトを通した共同研究。最先端コンピュータテクノロジの研究に必要な経済的・技術的支援を提供する。過去10年間で5,000人以上のインターンを受け入れてきた実績を生かした人材育成にも注力する。このほか、新たな研究分野の人材育成も重視し、ロボット技術、検索、データマイニングなどの新分野に対応したカリキュラム開発もサポートするとしている。なお、同プログラムでは、情報学分野の発展に寄与した若手研究者を表彰する「MSR日本情報学研究賞」を設置。2009年度は、五十嵐淳 京都大学大学院情報学研究科准教授、神谷年洋 産業技術総合研究所サービス工学研究センター最適化研究チーム研究員の2名が選出された。

「21世紀コンピューティングコンファレンス」では各分野で活躍する研究者らの基調講演やパネルディスカッションが行なわれた

また、カンファレンスなどを通じた研究成果に関する交流を持つ場を提供する。第1弾としてこの日、「21世紀コンピューティングコンファレンス(21CCC)」が慶応義塾大学(日吉キャンパス)で開催された。

(21CCCの様子は後日レポートを掲載予定です)