東京都と東京ビッグサイトは共催で11月4日から6日までの3日間、東京・台場の東京ビッグサイトにて「東京国際航空宇宙産業展 2009(ASET 2009)」を開催している。
同展は、航空宇宙産業の振興、製造業の発展、中小企業の航空関連市場への参入支援を趣旨として企画されたもので、今回が初開催となるにも関わらず、286社・団体(共同出展者含む)が232小間を出展している。中小企業の航空関連市場への参入支援という趣旨もあり、出展している企業も富士重工業やIHI、川崎重工業といった航空/宇宙産業の大手のみならず、部品メーカーや1地方都市レベルの自治体としての出展のほか、航空会社、在日米海軍なども出展を行っている。主な出展内容としては、産業規模の違いからか、航空機関連が多いが、そうした中見かけた、宇宙関連のものを展示していたブースのいくつかを紹介したい。
町ぐるみから県ぐるみへ、宇宙開発の拠点を狙う
浜松市のブースでは、同市に拠点を持つ部品メーカーの製品展示や静岡大学電子工学研究所の川人祥二教授が開発している「超高感度非冷却CMOSイメージセンサ(CIS)」などの展示が行われている。
このCISは冷却器を必要としない小型光感度広ダイナミックレンジカメラとして極微弱な光をとらえるバイオイメージングや科学計測用カメラ、車載用ナイトビジョンカメラ、低照度照明下での監視用カメラなどへの活用が見込まれている。
浜松市では静岡県自体に航空/宇宙産業などの重要性を申し送りしており、静岡県としても宇宙/航空やロボット産業などに向けた予算を計上するなど、1つの市だけではなく、県全体で新たな産業を創出しようという試みも進められているという。
県内の技術を結集し、地域産業の発展を狙う
栃木県に拠点を持つ航空宇宙産業に関わりのある企業など約90団体が参加した組織に「栃木航空宇宙懇話会(TASC)」と呼ばれるものがあり、今回はその中から6社がTASCとしてそれぞれがブースを出展している。
栃木県には、航空宇宙関連の素材、部品加工、電子機器、航空機機体、試験装置などの産業が集積している、というのがTASCの強みとしており、今回出展している6社もそういった分野を強みとした企業たち。中でも、菊池歯車は「H-IIA」の「LE-7Aエンジン」用液体酸素ならびに同水素ターボポンプのカットモデルを展示している。
同ターボポンプの全体を製造したのはIHIであったりするわけで、同社は双方のターボポンプの一部の製造を担当したという。一部とは言っても、高精度なものを要求される分野だけに、製品そのものは高い品質を実現したものとなっているという。
普及品で作られた「惑星探査車輌ローバー」
原田精機/原田精機工業のブースでは、自社開発を進めている「惑星探査車輌ローバー」の展示が行われている。同ローバーは2008年の「宇宙技術および科学の国際シンポジウム(ISTS)」に出展したものの発展版で、三角形の走行用ベルト(車輪)の中にモータを収めた(インホイールモータ)ほか、ネットワーク経由で遠隔操作が可能となった。また、車体に太陽電池を設置、バッテリに充電しながら走行することが可能になった。
さらに、重量を走行用ベルト1輪で約30kgの軽量化に成功。全体でも太陽電池パネルなどが搭載されながらも、100kg程度の軽量化に成功したという。材料は基本的に鉄やアルミ、マイコンなど市販のものを流用しており、「カーボンやチタンなどを用いれば軽量化は可能だが、その分コストが何十倍にもなってしまい、実用的ではない。我々はあくまで基礎技術の開発を行っているのであって、こうして得た技術をパートナーと組んでレスキューなどにも応用していくことを考えている」(同社説明員)としており、そういったパートナーを広く募集していくとしている。
1/25のH-IIA/Bロケットを展示
三菱重工業/三菱航空機のブースでは、H-IIAロケット標準型ならびにH-IIBロケットの1/25モデルや、先日無事国際宇宙ステーション(ISS)から切り離しが行われた宇宙ステーション補給機(H-II Transfer Vehicle:HTV)の1/20モデルなどの展示が行われている。
H-IIBはH-IIAをベースに打ち上げ能力拡大を目指して開発が進められているロケット。HTV打ち上げ対応により、H-IIAと併用して、日本の宇宙産業における国際競争力確保を狙っているという。また、HTVは全長約10mで、最大約6tの物資をISSへ届けることが可能な補給機。2010年にスペースシャトルが退役する予定だが、その後のISSへの物資を届けるという重要な役割の一翼を担うこととなる。
2時間で太平洋を横断する極超音速機
日本の宇宙開発を牽引してきた宇宙航空研究開発機構(JAXA)ブースには、これまで開発してきたロケットや宇宙関連の展示が行われていると思っていたが、実際はそうではなく、開発中の極超音速機の1/100モデルの模型と静粛超音速研究機(Silent Super Sonic Technology Demonstrator:S3TD)の1/10モデルの展示が行われていた。
2004年から開発がスタートした極超音速機はマッハ5で飛行するというもの。これが実現すると、2時間で太平洋の横断が可能になり、4時間でほぼ地球の全域に到達できるようになるという。
一方のS3TDは、ソニックブームの低減や離着陸騒音の低減のほか、離着陸から巡航までの自律飛行実現などを目的に開発が進められているもので、試験速度の目標はマッハ1.4以上、試験高度12~16kmとしている。