Alteraは11月2日(米国時間)、同社のFPGA「Cyclone」シリーズとして、Taiwan Semiconductor Manufacturing(TSMC)の60nm LP(Low Power)プロセスを採用した「Cyclone IV」ファミリ2シリーズを発表した。

60nm LPプロセスを採用した低消費電力/低コストFPGA「Cyclone IV」のパッケージイメージ

日本アルテラの代表取締役社長である日隈寛和氏

同製品の発表に際し、同社日本法人の日本アルテラの代表取締役社長である日隈寛和氏は、「FPGAを活用する顧客からは、コスト低減要求に加え、低消費電力化に対する要求が強まっている。また、そうした状況ながら機能を向上させたい、という相反する要求も出ている。こうした状況に対し、AlteraはCPLDのMAXシリーズからハイエンドFPGAのStratix、そしてHardCopyまで幅広く提供している。現在、Stratixの最新世代である40nmプロセス品なども好調に推移しており、Cycloneの新シリーズの登場により、より顧客のニーズに対応できるようになった」と語る。

また、Cyclone IVは従来以上に低消費電力および低コスト化を意識した製品であり、「これにより、FPGAとしては新規分野であるASICやASSPが用いられている領域に入っていく準備が整った」(同)とし、ASICやASSPから顧客をFPGAにどうやって切り替えるタイミングを提示していくかが重要であり、「2010年は日本アルテラ設立20周年の節目の年となる。これを機に日本市場で大きく飛躍できるよう努力していく」(同)と抱負を述べた。

カスタマからは低コスト化と低消費電力を実現しながらも高機能なものを、というニーズが強まっている

そうした要求に対応するために、幅広いポートフォリオを提供

Cyclone IVは、最大8個の3.125Gbps統合トランシーバを搭載した「Cyclone IV GX」シリーズと、コア電圧を1.0Vに低減し、Cyclone III比で低消費電力化を最大25%削減した「Cyclone IV E」シリーズの2種類が用意されており、用途に応じた使い分けが可能だ。今回のGXシリーズの投入により、60nmプロセスおよび40nmプロセス製品で3.125Gbpsから11.3Gbpsまでのトランシーバが選択可能となる。

「Cyclone IV」ファミリとして予定されている製品一覧(「EP4CGX15」および「EP4C115E」が2010年第1四半期より量産出荷を予定している。この2製品のLE数がカスタマから一番数的ニーズが高かったと言う)

Cyclone IV GX(左)とE(右)のパッケージ内訳(GXはI/O数とトランシーバ数、EはI/O数)

このトランシーバは、PCI Express(PCIe)Gen1.1をハードIPでサポートしているほか、ギガビットイーサネット(GbE)やシリアルRapid IO(sRIO)、SATA、DisplayPortなど主要プロトコルについてはソフト的に対応するほか、機能をカスタマイズすることで各社独自プロトコルを実装することも可能だ。

Cyclone IV GXがサポートしているプロトコル各種(これ以外にも対応は可能)

AlteraのVice President,Product&Corporate MarketingのVince Hu氏

上位製品となる「Arria II GX」シリーズが3.75Gbpsのトランシーバを搭載していることもあり、Cyclone IV GXの3.125Gbpsサポートは妥当な面もあるが、同データレートを選択した理由について、AlteraのVice President,Product&Corporate MarketingのVince Hu氏は、「PCIからPCIeへ変換するといったスイッチ分野などでは、3.125Gbpsで十分な性能だ。また、PCIeのみハードIPとしたのは、同規格がさまざまな場所で使用されているためで、使い勝手を向上させるためだ」と説明する。また、同トランシーバに関しては、Stratixなどで使用しているトランシーバと根幹は同じとしているが、低消費電力化などを実現するために、余剰な回路部分などを削除するなど、「より必要な部分の絞込みを行い、消費電力に加え、使用面積の抑制に成功している」(同)という。

ブリッジチップとしての活用例(ASSPとチップコストやBOMコストを比較しても低く抑えることが可能なほか、新規格への対応が可能なため、製品の陳腐化を抑えるなどの付加価値を加えることが可能になるという

Cyclone IV GX、同Eともにサンプル出荷は予定しておらず、2010年第1四半期より順次量産出荷を開始する予定。提供単価は最少デバイスである6,000LE(Logic Element)品のCyclone IV E「EP4CE6」が25万個購入時で3ドル、同最少LEのCyclone IV GX「EP4CGX15」(1万4,000LE)が同じく25万個で6ドルとしている。この25万個という数については、「Cycloneは初代からすでに1億2,000万個の販売実績を持つ。年間に直せば平均2,000万個の出荷だ。25万個という単位については多いとは考えていない」(同)と説明する。

同製品の主なターゲットとしては、通信インフラやフェムト/ピコセルといった分野であり、コンシューマに関しては、「日本地域はコンシューマ機器の発信点であり、過去には液晶テレビのT-CONなどにも活用された例もある。今後も3D化や4K2Kと言った分野でFPGAが活用されていくと見ている」(同)としているほか、「すぐに活用されるであろうアプリケーションとしては、ブリッジ用チップが考えられており、そうした分野では有線、無線、産業用など幅広い分野で活用されるものと期待している」(同)とする。

Alteraの提供する先端プロセスによるトランシーバ搭載FPGAシリーズ

また、トランシーバを用いるGXシリーズのコア電圧が1.2Vでありながら、用いないEシリーズは同1.0Vなのかについては、「トランシーバを搭載すると、データの精度が要求される。そういった意味では0.2Vは大きな差。Eは低消費電力に注力したものであり、そうした意味では性能面で既存のCyclone IIIを用いている顧客すべてを満足できるとは思っていない。IV Eの性能で不足な場合はIIIを使ってもらうことを提案している」(同)とする。

なお、日本市場と日本のカスタマについては、「Alteraにとって日本は重要な市場である。それはイノベーションの発信地であり、特にコンシューマ分野は新たな製品を生み出す力を持つカスタマが非常に多く居る。そういう既存のメーカーのほかにも、Cyclone IVはさまざまな用途を生み出せると信じている。だからこそ、興味を持ったカスタマはどんな分野の方であれ使ってもらいたいと思っている」(同)と、全方位でカスタマに向けたアピールを行っていくとした。