NECエレクトロニクスは10月28日、2010年度第2四半期決算の概要を発表した。それによると、同社の売上高は前年同期比29.2%減の1,185億円、半導体売上高は同28.5%減となるも、前四半期比ではすべての製品群で増収となり、想定を若干上回る1,138億円となった。また、営業損益は前四半期比で改善はしたものの、前年同期比では155億の損失へと赤字幅が拡大、純損益も174億円の損失となった。その結果、同社上半期の業績は売上高が前年同期比33.9%減となる2204億6,700万円、営業損益は同12億600万円の黒字から363億9,200万円の損失となったほか、純損益も前年同期の7億円の損失から374億9,400万円の損失へと赤字幅が拡大した。

NECエレクトロニクスの2010年3月期上期業績と同第2四半期の半導体売上高構成

NECエレクトロニクスの代表取締役社長である山口純史氏

同社代表取締役社長の山口純史氏は、営業損益の悪化の主な要因の1つとして300mmウェハ対応ラインの稼働率が悪化したことを上げている。同社のすべての工場を足し合わせた平均工場稼働率は「67~68%程度だが、300mmウェハ対応工場だけをみれば、デジタルコンシューマ関係の需要、特にゲーム、デジタル家電、携帯電話用カメラ向けLSIなどが減退した結果、製品出来上がりベースで6割強がやっとの状態だった」(山口氏)とする。

このため、同社では通期業績の予想修正を発表。前回決算発表時に予想した通期業績から、売上高を200億円減となる4,600億円に、営業損益を0円から465億円の損失に、純損益を75億円の損失から535億円の損失に、純損失を90億円の損失から550億円の損失へとそれぞれ下方修正した。

NECエレクトロニクスの工場稼働率と粗利益率推移(工場稼働率はすべての工場の平均)

下期/通期の業績見通しを下方修正

ただし、自動車向けマイコンやディスクリートなどの個別半導体は想定以上の増収を果たしており、受注も9月には大幅な伸びを示しているほか、10月も受注状態が9月の受注高水準まではいかないものの、堅調に推移していることから、下期にかけても引き続き売り上げが伸びていくことが見込まれるとしている。また、「SoC関連もこの下期が底。40nmプロセス品などはすでに底を打ったと見ている」(山口氏)と業績の改善が進んでいることを強調、下期においては売り上げの拡大による利益の増大に加え、2010年度以降の受注予測も踏まえ、売上増以上の生産増を行うことによる工場稼動益が見込まれるほか、固定費削減として下期に400億円の削減目標を実行していくことで、「2010年度の営業黒字化を達成したい」(山口氏)とする。

下期の半導体売上高の見通し

下期における利益改善活動の内容

同社が注力してきた40nmプロセス品と低消費電力技術を適用した製品が売り上げの改善に寄与する状況となってきたとしており、40nmプロセス品は下期から、低消費電力品も成長ラインへと育ってきており、2010年度以降確実に利益に貢献してくる見込みという

なお、同社は現在ルネサス テクノロジと2010年4月の合併に向けた取り組みを進めている最中であるが、2010年度の営業黒字化との発言に関しては、「NECエレクトロニクスとしての黒字化を目指すことで、新会社"ルネサス エレクトロニクス"も黒字化を実現できるように貢献していく」(山口氏)という意味としている。

このほか、同社では構造改革として、従来の生産ラインの統廃合に追加する形で国内の前工程および後工程の工場の再編も併せて発表している。

これにより、前工程工場では、NECセミコンダクターズ関西の滋賀工場の5インチ拡散ラインを2012年3月までに閉鎖。一部の製品は同工場の6インチ(150mm)拡散ラインおよびNECセミコンダクターズ山形の5インチ拡散ラインに移管を行う予定。

一方の後工程工場は、NECセミコンダクターズ九州・山口の大分工場に建設した新工場棟において2009年10月よりFCBGAパッケージの生産を開始したことを期に、組み立てラインが小さな福岡工場のFCBGAライン、および従業員を2011年9月までに大分工場に、QFPなどの継続生産品を大分工場および熊本錦工場に移管することで、組み立て工程の生産性向上を図るとする。なお、これにより同社では福岡工場の建屋と敷地については売却する方向で調整を進めるとしている。

これらの施策により、大分工場は2011年3月期中をめどにFCBGAパッケージの生産能力を月産200万個に引き上げるとするほか、大分工場全体で、現在月産約1,400万個を生産しているマイコン、システムLSI(QFPパッケージ品)向けの生産能力を、2012年3月期中に生産能力を月産1,800万個まで引き上げ、規模の拡大による生産効率の向上を図っていくとする。