航空機が目的地の空港を160km以上通り過ぎて飛行し、Uターンして引き返すという事故が米国時間の21日に発生した――パイロット2名による不注意が原因とみられていたこの事故だが、米Wall Street Journal (オンライン版)の26日の報道によれば、なんとこのパイロットらが自身のノートPCの操作に夢中でコックピットの計器等を見落としていた可能性が調査で判明したという。

管制局と交信途絶えて1時間……そのときパイロットは

長距離移動には欠かせない飛行機。それだけに今回のノートPCが発端の事故は驚きだ

事故を起こした飛行機は現在米Delta Air Lines傘下にあるNorthwest Airlines 188便。米カリフォルニア州サンディエゴを発ち、21日夜にミネソタ州にあるミネアポリス/セントポール空港に到着する予定だった。ところが前述のとおり、同機はミネアポリス上空をそのまま通過してしまい、管制局との交信も1時間以上途絶えていたため、ハイジャックを警戒した米空軍がスクランブルのために待機状態に入るというハプニングとなった。その後、NW188便はミネアポリスから100マイル(約160km)を過ぎ去ったあたりで交信を回復、大きくUターンする形で空港へと戻り、予定の場所へと降り立った。150人ほどいた乗客は全員無事だったという。Deltaは当該のパイロットを勤務から外し、米運輸安全委員会(NTSB)はパイロットが居眠りして位置を見失った可能性があるとして調査を開始していた。この時点で両パイロットは「会社の経営方針に関する議論が白熱して状況を見失っていた」とコメントしていた。

ところが26日にWSJが関係者からの話として伝えるところによれば、NTSBがパイロット2名に行った聴き取り調査で、両名が自身のノートPCを取り出し、コックピット内で勤務スケジュールに関するやり取りや作業を開始してしまっていたことが判明した。つまり、ノートPC上での作業に夢中で、航空機は自動操縦のまま長時間にわたって放置されていたことになる。NTSBによれば、コックピット内でパイロットがノートPCを使用することを禁止する決まりはなく、地上との交信や計器類から目を離さない範囲で、自己責任において利用が可能になっているという。WSJによれば、国際線などの長距離フライトで天気がよく、海上を長時間にわたって自動操縦で航行するような状況などでは、実際にDVD再生などをノートPCを使って楽しんでいるパイロットもいるとのことだ。とはいえ、今回の事故のような不注意は余りにもお粗末だ。

実は居眠り運転の可能性も

今回の事件ではいくつかの留意点があるとして、NTSBは引き続き調査を続けている。まず、ノートPCの利用でパイロットがコックピットの計器を視認できなくなっていなかったかどうか。今回問題となったNW188の機材は仏Airbus製のA320型機だが、同種ならびに他の航空機でコックピットでのノートPCの利用が視界を妨げていなかったかという点が問題となる。そして次が、本当に居眠りをしていなかったかという点だ。地上との交信が途絶えていた時間が75分とあまりにも長く、パイロットが問題に気付いたのが、(本来の到着予定時刻の5分前に)客室からの乗務員の「正確な到着時刻」を訪ねるインターフォンだったということで、NTSBではノートPCによる不注意以外の可能性を探っている。同様の空港通過事件は何年か前にも米United Airlinesで発生したが、こちらは45分間の沈黙時間の原因は居眠り運転だったという。

今回は両パイロットともに5,000時間以上のフライトをこなしているベテランだったとのことだが、ルーチンワークでの油断があったかもしれない。自動車運転中の携帯電話などもそうだが、われわれもこうした乗り物運転中の不注意による事故には気を付けたいところだ。