Analog Devices(ADI)は10月27日、通信基地局向け機器や産業用/計測機器などにおける高速通信機能などに向けたA/Dコンバータ(ADC)7ファミリ26品種を発表した。いずれもすでにサンプル出荷は開始しており、2009年10月より順次量産を開始していく予定。価格は1,000個受注時で3.50ドルからとなっている。

26品種は分解能が10/12/14/16ビット、サンプルレートが20/40/65/80/105/125MSPSで分かれており、最上位品となる「AD9629」シリーズはデュアルチャネル高速ADCとなっている。

今回発表されたADC26品種(なお、AD9255の80MSPSは掲載スペースの関係上省かれている)

各製品の型番と分解能、サンプリングレート、消費電力(同じサンプリングレートでも型番によってノイズ特定が異なっている。基本的に消費電力が大きいほうが低ノイズ、高SNになっているという

AD9269シリーズは、プロセス技術および回路アーキテクチャの進展により消費電力を競合製品比で87%減となるチャネル当たり93mWに抑えることに成功している。デュアルチャネルを実現しており、Quadrature Error Correction(QEC:直交誤差補正)ブロックとDCオフセット・デジタル処理ブロックを内蔵したことにより、I/Q信号受信器システムにおける誤差の最小化が可能となっている。また、Duty Cycle Stabilizer(DCS)により、クロック・デューティ・サイクルが規定外になった場合においても、自動的に規定内のクロックに再作成することが可能だ。

AD9269の機能ブロック図

QECはADCの処理前の(IとQそれぞれの正弦波が入力される際のクロストークノイズなどの影響で発生する)リークや部品間のミスマッチで発生する直交/ゲイン誤差を補正することが可能

QECとDCオフセットを用いたデジタル処理により不要な信号の切り離しが容易になる

さらに、オフセット・バイナリ、グレイ・コード、2の補数フォーマットのデジタル出力データのサポートや、出力データ同期用クロック(DCO)による受信ロジックとの正確なラッチタイミングの実現などが可能となっている。

AD9269/AD9266と競合製品の比較

このほかのシリーズは、16ビット低消費電力/高速ADC(80~125MSPS)「AD9265」が3製品、5mm×5mmの32ピンLFCSPを採用した20~80MSPS対応の16ビットADC「AD9266」が4製品、14ビット低消費電力/高速ADC(80~125MSPS)「AD9255」が3製品、AD9266同様小型パッケージを採用した20~80MSPS対応の14ビットADC「AD9649」が4製品、12ビットADC「AD9629」が4製品、10ビットADC「AD9609」が4製品となっている。

AD9269はデュアルチャネルの用途として主に3G、LTEや4Gといった無線通信分野をターゲットとしており、そうした分野でのシステム全体の消費電力の低減やメンテナンスコストの低減などにも対応することなども含め、システムベンダへの提案活動を行っていくとしている。

通信インフラにおけるADI製品の適用イメージ

なお、これらの製品を活用するための実用回路集やビヘイビアモデル、オンライン設計ツールなども順次提供が進められている。