既報のとおり、弥生は12月4日から同社の2010年度のメイン商品となる業務ソフト「弥生 10(いちぜろ) シリーズ(以下、10 シリーズ)」を全国一斉発売する。「手応えはある。あとはお客様の判断に任せたい」と同社代表取締役社長 岡本浩一郎氏は、すこし神妙な面持ちで語る。
昨年来の不況から、業務ソフト市場も規模が縮小しつつある。弥生は2009年度、シェア1位は保ったものの、売上金額は減少してしまった。経費削減を推し進めた効果もあり、営業利益は確保しているが、マーケットリーダーとして市場をこのまま縮退させてしまうことは許されない。「2010年度は市場拡大に向けた努力をさらに徹底する。それが我々の責務」とする岡本社長に、弥生 10 シリーズの特徴と、2010年度に向けての同社の戦略について伺った。
--10 シリーズの機能強化のポイントを教えてください。
大きく分けて3つのポイントがあります。まず第1にデータの保全性が格段にアップしたことです。Windows 7への完全対応もこれにあたります。ご存じのとおり、Windows 7は非常にセキュアなOSへと進化しました。当然、その上で動くアプリケーションも同様の対応が求められます。業務ソフトを使うユーザにとって最も重要なもの - それはデータです。アプリケーション上でデータが消えてしまうようなことがあっては絶対にならない。10 シリーズのキャッチフレーズは「かんたん、やさしい、あんしん」ですが、この「あんしん」の部分についてはかなり力を入れて開発にあたりました。
第2のポイントはオンライン対応をさらに推し進めたことです。オンライン対応は05 シリーズから行っていますが、これまでの「オンラインバックアップ」「オンラインアクティベーション(ライセンス認証)」に加え、10からは「オンラインアップデート」が利用できるようになりました。ソフト起動時に、自動でアップデートが実行され、必要なモジュールがダウンロードできます。機能修正/追加はもちろん、法令改正や確定申告対応などはできるだけ迅速に行われるべきですが、CD-ROMによるアップデートでは時間がかかりすぎていた。オンラインアップデートにより、最新モジュールをタイムリーに提供できるようになったので、ユーザの利便性は大きく向上すると思っています。
第3のポイントは業務マニュアルによる導入支援です。これは通常の操作マニュアルのほかに付加した機能で、とくにはじめて業務ソフトを使うユーザに最適だと思っています。たとえば仕訳入力のとき、どういった手順で入力するのか、どのタブをクリックするのか、といった具体的な入力方法を指示しています。業務の流れに従って、実際の取引を例に進めているので、非常にわかりやすい。この機能を付けるのはけっこう大変な作業でしたが、最終的には満足いただける仕上がりになったと自負しています。
09 シリーズのときも申し上げましたが、我々は"ユーザ不在"のむやみやたらな機能強化は行わないようにしています。それよりも「マニュアルには書いていない、目に見えない部分の使いやすさ」を実感していただきたい。10 シリーズではかなりの部分でそれが実現できました。当社のエンジニアも、今回は相当の"満足感"をもって製品を市場に送り出せたと思います。