Adobe Systemsのサンフランシスコオフィスは、港から鉄道へと荷を積み替えるために使われた旧倉庫街の一角にある。もともとは材木会社によって使われていたという煉瓦造りの大きな建物は、2003年にMacromediaによって買い上げられ、大規模な改装によって外観や内部の構造をそのまま残しつつIT市場の最先端を支えるオフィスへと生まれ変わった。その後Macromediaの買収とともにAdobeのオフィスとなったが、現在でも旧Macromedia製品のチームが多く入居しているという。

全体の構造は煉瓦造りで、内部は太い木の柱によって支えられている。地上3階、地下1階の4階層構造。天井は高く、壁が少ないため解放感がある。部分的に鉄やコンクリートの支柱で補強が行われているが、基本的な構造は建築された当時のまま使われているという。

煉瓦造りの外観

間近で見上げるとその重厚さがなんとも言えない迫力を醸し出している

エントランスにはAdobe製品のロゴが並べられている。杉の木でできた太い柱や梁も倉庫として使われていた当時のまま

入って正面が食堂エリア。各国の料理が日替わりで食べられる。メニューには寿司もあるとか

よく見ると天井にスクリーンとプロジェクターが。会議や製品発表に使われることもあるそうだ

建物内は部分的にコンクリートの柱で補強されている

天井には空調用のダクトや配線用のレールが縦横に走る

各スタッフには150 - 200cm程度のパーティションによって仕切られたスペースが割り当てられる。担当する部署や製品ごとにエリアは分けられているようだが、個別の部屋になっているわけではない。その構造のためプライバシーは少ないが、それを補う意味もあってか快適に仕事ができるようにという配慮が随所になされている。また、各人でも衝立(日本の障子や屏風のものが流行っているらしい)を設置するなどの工夫を行っていた。

壁のない解放感あふれる空間だが、プライバシーは少ない

メインの机は高さの調節が可能。できる限り快適に仕事ができるようにという配慮から

コーヒースペースにはトースターや冷蔵庫も

プライベート空間の少なさを補うため電話ルームなどが用意されている

会議室などの個室には過去の製品のコード名が付けられている。「Blackstone」はColdFusion MX 7のコード名

プレゼンテーションルーム。ビデオ会議システムも備えている。しかしこの位置からだと柱が邪魔してスクリーンが見づらい

エレベータ前の非常に解放的なスペース

古い構造を残しつつ近代的なシステムによって補強された、新旧のハイブリッドとも言える建物。しかしその一角には、改装の際に手つかずのまま残されたエリアもある。歴史を忍ぶとともに、落ち着いた空間がインスピレーションの手助けをすることもあるとか。

建築当時の姿を残す場所も。あえて電灯をおかず自然光を採り入れるにとどめている

Historic Elevatorと書かれている。これも建築当時からあるものなのか

こちらも古いまま残された階段

階段を降り切ったら、そこは娯楽室だった。気分転換にビリヤードや卓球に興じることができる

オフィス内のいたるところに絵画や美術品が飾られている。これらはハンディキャップを持つアーティストやデザイナの作品で、Adobeによる支援活動の一環でもあるという

地下へ降りと、そこは非常に広い倉庫になっていて、オフィス用品などが雑然と積み上げられていた。しかしよく見ると古い製品のパッケージやMacromedia時代の産物がチラホラ。つい本格的に探索してみたい衝動に駆られてしまう。

不要になった椅子たち。再度使われる日を待って眠っている

改装前から残されたままだという煉瓦の山。これ自身歴史のあるものなので捨てられないのだとか

こんなところにMacromedia Flash 5のパネルが。煉瓦とは別の意味で歴史を感じさせられる

おや、あの「a」の文字は…

倉庫から裏口を通って地上へ。少しほっとする

PhotoshopやFlashなどをはじめとしたクリエイティビティをサポートするAdobeの製品群。それを生み出しているサンフランシスコオフィスは、煉瓦と木に囲まれた、解放感あふれる空間だった。古き良きものを大切にし、そこから新しいものを創り出していくという文化が根付いているのかもしれない。