三菱電機は10月22日、国際宇宙ステーション(ISS)への貨物運搬に用いられる予定のNASA(米航空宇宙局)の宇宙貨物輸送機「Cygnus」に用いられる近傍接近システムを、同輸送機を製造する米Orbital Sciences(OSC)より受注したことを発表した。
Cygnusは2010年に退役が予定されているスペースシャトルに代わるISSに向けて補給物資や実験設備などを運搬するための手段として開発されている宇宙貨物輸送機。2011年に実証機が打ち上げられ、2011年から2015年の間に合計8機の量産機がISSへ貨物を輸送する計画となっている。三菱が受注したのはこの合計9機分の近傍接近システムで、受注総額は60億円(6,600万ドル)としている。
近傍接近システムの具体的な内容は、CygnusがISSとランデブドッキングするときに、日本実験棟「きぼう」に搭載されている近傍通信システムと姿勢制御データや動作状態をやり取りするというもので、ISSとの通信を行うトランスポンダ、送受信を1本のアンテナで行うダイプレクサおよび各データを処理するデータハンドリング・プロセッサで構成されている。
三菱電機では、宇宙事業(人工衛星)を成長戦略の1つとして考えており、「現在の年間売り上げ700~800億円を10年後をめどに1,500億円規模に引き上げ、衛星メーカランキングで現状8位のところを5位以内に食い込むことを目指す」(同社上席常務執行役 電子システム事業本部長の栗原昇氏)という。
同社の同事業のラインナップは「静止衛星(商用衛星)」「低軌道周回衛星(中小型標準衛星)」「輸送機用機器」「搭載機器(コンポーネント)」となっており、商用衛星はシンガポールテレコムなど海外からの受注もあり、「今後も年間で1台は受注していく方向で、将来的にはそれを2台に増やしていくことで事業の拡大を狙いたい」(同社電子システム事業本部 宇宙システム事業部長の稲畑廣行氏)とする。
また、衛星バスの標準化を中小型などでの進めていくことで、低コスト化と高品質化の両立を実現するほか、コンポーネントのラインナップ拡充などを行っていくことで、国内外でのバランスの取れた成長を果たしたいとしている。
このほか、輸送機用機器についても、2009年9月11日に打ち上げられたHTVに電気モジュールを提供するなどの実績を有しており、「今後はHTVの運用機に加え、将来の派生型や起動間輸送機、月輸送機などへの応用をしていきたい」(同)とする。
なお、今回、近傍接近システムがCygnusに採用された理由としては、「もともとHTVに搭載され、きぼう側の近傍通信システムとの間で正常に機能したことが高く評価されたからだと思っている」(栗原氏)としており、今後もモジュールからテスト、衛星本体まで一貫して製造することに加え、地上側の設備なども併せて提供していくことで、商用利用の発達による市場拡大が見込まれる宇宙産業に対し、「宇宙を産業として考え、さまざま企業が計画的に投資をする段階に来ている。これからは政府だけではなく民間の成果も活用し、官民一体となって、宇宙利用の拡大を図っていくための活動を行っていく」(同)と、幅広く民間に宇宙利用を呼びかけていく取り組みを進めていくとした。