「レゴ(LEGO)」と聞くと、恐らくこの記事を読まれる大多数の読者の方の頭にはプラスチック製のレゴブロックが思い浮かんでいることだろう。そもそも"LEGO"という単語は、デンマーク語の"LEg GOdt(よく遊べ)"から生まれた言葉であることはよく知られた話であるが、レゴではその遊びの中におけるさまざまな発見を元に、子どもたちの好奇心や探究心をかき立て、この"遊び"の中にある"楽しい"とか"面白い"といった気持ちから自然と多くの知識を学ぶことを目的に設立された教育部門が「レゴ エデュケーション」であり、「子どもたちの自発的な学びは遊びから生まれる」というレゴの理念に基づき遊びと学びを支援する教材やカリキュラムの開発うぃ行っている。

日本でも全国12カ所に「レゴエデュケーション センター」を設立し、レゴブロックを活用した教育を行っている。"教育"と聞くと、いわゆる習い事といったイメージが付きまとうが、実際に教室の様子を見てみると、そのイメージが間違いであることが分かる。今回、レゴ エデュケーションセンターの1つである自由が丘教室の授業を拝見させていただいたので、そこで何が教えられているのかをレポートしたい。

教室の入り口を入ると、レゴ エデュケーションの看板が出迎えてくれる

遊んでいたら、いつの間にか学んでいる

レゴ エデュケーションセンターの授業を簡単に説明しておくと、1回の授業は50分。対象年齢は幼稚園年少(3歳)から小学5年生までだが、それ以上の子どもも在籍可能で、そうした子どもたちはレゴブロックを中心としたレゴの提供する材料を活用し、大規模な仕掛け、いわゆる「ピタゴラ装置」を作ったり、レゴの教育用ロボット「マインドストーム NXT」を活用した「FIRST LEGO League(FLL)」への参戦なども行っているという。

教室の待合室においてあるレゴは生徒が作ったものも多数(本棚にはロボット関係の本も多数置いてある)

カリキュラムは各学年ごとに年間45レッスン分(4月~翌年3月)が用意、1レッスンにつき1枚のワークシートを用いて授業が行われる。授業といっても、鉛筆を持ってノートに何かを書くわけではなく、もちろんレゴ製品を活用したもの。拝見したときは、1年生のカリキュラム「マイ・ワールド・インベンション」を用いたクレーンの作成と、3・4年生のカリキュラム「ワールド・ロボティクスI」としてマインドストームNXTを用いた電動ミキサーの開発が行われていた。

まずは1年生のクレーンの作成から紹介したいと思う。クレーンといっても、レゴブロックを用いたもの。ただしカリキュラムにはプラモデルのように1から10まで作り方が載っているわけではない。載っているのはクレーンの素組みの完成した姿が2枚だけ。

1回の授業のワークシートは1枚。今回はクレーンを作るというもの(小学1年生が自分で1から考えて失敗しながら作って、今回は15分程度でワークシートに描かれた状態まで到達した。ここから先は自分の発想力の勝負となる)

子どもたちはこれを見て、自分で考えてクレーンの仕組みを作り上げることとなる。つまり、「どう作るのか」や「作っていく途中で生じた問題をどう解決していくのか」、「絵から立体的なものを認識する空間認識力の訓練」などがこれから養われることとなる。しかも、クレーンの骨組みが作り終えたあとは、実際にクレーンでブロックを引き上げて見たり、クレーン車のような外側の部分を思い思いに作ったりするなどの工夫を自主的に行うような仕掛けになっている。

ちなみに"マイ・ワールド・インベンション"は4つのテーマ「動物の身体とその動き」「機械の仕組み」「家の中のものの仕組み」「独創的なもの作り」があり、年間の最後のテーマとして、独創的なもの作りとして、レゴブロックのタイヤを活用したパレード用の山車の作成を行うという。

一方の"ワールド・ロボティクスI"ではマインドストームを用いて、プログラミングの基礎を身に着けることを目的としたもの。今回見せてもらった電動ミキサーもモーターの回転プログラムを自分で作成して動かしていた。また、プログラムだけではなく、どの歯車と歯車を組み合わせることで、どれだけ回転が速くなるのかを計算して確かめる、といったことも行われていた。

授業ではマインドストームNXTが活用される

単にプログラムするだけでなく、効率よくミキサーを回転させるための仕組みも併せて考える

また、NXTのボタンを押すことで、単にプログラムを起動させる、終了させる、ではなく、一時停止、再スタートなどをループの操作を用いて実現する方法なども授業中に発展系として展開されていた。

パソコンを用いてモーターの回転などをプログラミング

実際のプログラムの画面(アイコンを用いてグラフィカルにプログラムが可能)

ちなみに、ワールド・ロボティクスIおよび同IIでは、NXTに入っている基本的なセンサはすべて用いられ、ライントレースや超音波センサによる衝突防止といったプログラミングを3~4年生の間に学ぶことができる。

みんなで集まって、それぞれ思い思いの電動ミキサーを実際に動かして、そのプログラム内容の意図などを説明する
作った電動ミキサーを実際に回してみたところ(wmv形式 958KB 5秒)
こちらは回る歯の部分を大きくしたもの(wmv形式 836KB 4秒)

世界中で注目されるロボットを用いた教育

実はこうした"ロボット作製における課題の自己解決力の強化"は世界中のさまざまな分野で注目されているという。しかし、日本ではまだそういった取り組みは始まったばかりで、レゴ エデュケーションセンターも設立されて9月で5年目になったばかりだという。

こうした教育の根底にあるのが、以下に記す4つ"C"によるサイクルだとレゴ エデュケーションセンターではしている。

  1. Connect(結びつける)
  2. Construct(組み立てる)
  3. Contemplate(よく考える)
  4. Continue(さらに続ける)

これを繰り返すことが、子どもの頭脳からさまざまな発想が生み出されることに結びつくこととなるというのが、レゴ エデュケーションの目指すところである。実際に授業の様子を見ると、子どもが集中して、かつ楽しく遊んでいるようにしか見えないが、その手の先では確実に"何か"が生み出されていく様が垣間見えた。結果として、こうした考えを子どもたちは実体験を通じて感じ、それを体現しているようであり、まさにブロックを通して未来を考える力が育っているように感じられた。