KDDIの代表取締役社長兼会長 小野寺正氏

国際電気通信連合(ITU)がスイス・ジュネーブで開催した「ITU Telecom World 09」で10月8日、KDDIの代表取締役社長兼会長 小野寺正氏がフォーラムに参加し、WiMAXとLTE、デジタルデバイド、環境などについて語った。

小野寺氏は、モバイルブロードバンドでの取り組みとして、子会社のUQコミュニケーションズが6月にWiMAXの商用サービスを開始したこと、LTEではライセンスを取得してローンチに向けて準備を進めていることを報告した。

3GではCDMAとWCDMAとして対立していたCDMA陣営が、3.9世代ではWCDMAのLTEに移行している。KDDIもその1社で、同社のほか米Verizon Wirelessも移行計画を発表している。

このような戦略変換をはじめ、企業は常に意思決定を行っていかなければならない。これについて小野寺氏は、「投資の意思決定は難しい」としながら、研究開発と次のネットワークは何かの見定めの2段階があると述べた。

LTEがあるのになぜWiMAXか? - 2つの技術は対立するといわれているが、小野寺氏は、将来はわからないとみているようだ。小野寺氏は、「LTEはセルラー通信を強化した技術で、WiMAXはMACアドレスをベースとしたWi-Fiの拡張技術」とし、技術の性質が異なるとした。

固定網では、オールIPネットワークが同社の戦略だ。「モバイルネットワークと固定は共存する」と小野寺氏、「IPベースのネットワークにすることでさまざまなサービス、コンテンツをいつでもどこでも、端末を問わずに利用できるようになる」と続けた。ここで同社は、FMC(Fixed Mobile Convergence)にブロードキャスティングの"B"を加えたFMBCを推進している。

環境については、鳩山首相が気候変動サミットで発表した"2020年までにCO2排出量25%削減"という目標に触れ、「徹底的な努力が必要」と述べる。「ICTのグリーン性、ICTがもたらすグリーンのメリットは業界の成功にあたって重要な要因」とした。

イベントのもう1つの大きなテーマであるデジタルデバイドについては、「KDDIは15年前からトレーニングの提供やPCの供給などを通じて支援している」と取り組みを紹介し、「デジタルデバイドの縮小は非常に重要だ」と語る。そして、電話番号も不要で、電話網に依存しないことから、WiMAXは途上国に適した技術ではないのかという見解を示した。

このフォーラムのテーマは、「状況への順応」だ。KDDIに限らず、世界のオペレータがトラフィック増および売り上げが頭打ちという状況にある。

SwisscomのCEO Carsten Schloter氏

パネルに参加したスイスSwisscomのCEO Carsten Schloter氏は、IPベースが及ぼす影響として、「新しい競争が出てきている」と述べる。「イノベーション、新しいサービス、アプリケーションが次々と登場しており、予想が難しくなってきた」とSchloter氏。「投資と言う意味では課題」とした。オペレータは価格の低下と需要の増加の中で、「キャッシュフローが限界に達しつつある」と状況を説明する。

そうした上でSchloter氏は、オペレータのチャンスとして、一般ユーザー向けでは、IPTVなどのリッチメディア、ストレージ、コミュニケーションクライアントを挙げる。ストレージとは、ブロードバンドにより、顧客は端末側にデータを持つのではなく、ネットワークにアクセスするようになるというトレンドだ。さまざまな端末からアクセスするストレージで、オペレータは解決策を提供できる、とした。コミュニケーションクライアントとは、携帯電話、PC、TVの3つの画面をシームレスに統合するサービスをさす。

企業向けでは、マネージドサービスやホスティングで、拡張性を提供できるかがカギになる、とした。