シャープは10月22日、「化合物3接合型太陽電池」の太陽電池セルで変換効率35.8%を達成したことを発表した。化合物3接合型太陽電池は同社が2000年より開発を進めてきた光吸収層を3層(トップ層・ミドル層・ボトム層)に積み重ねることで高効率化を実現する化合物太陽電池で温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」などへの搭載実績がある。

今回開発された変換効率35.8%を実現した化合物3接合型太陽電池セル

同太陽電池では、高効率化には各光吸収層の結晶性の向上と太陽光エネルギーの利用を向上させる材料構成が重要となっており、従来、ボトム層にはGeが用いられてきた。しかし、Geはその性質上、発生する電流量は多いものの、電流の大半が電気エネルギーとして利用できず無駄になるという問題があった。

この問題を解決するため、同社では、利用効率の高い材料であるInGaAsをボトム層として形成することを目指していたが、結晶性の高い高品質のInGaAsを作る工程が課題となっていた。

同社では、今回、独自の層形成技術を開発、「結晶性を高めたInGaAsの層形成」を実現することに成功、無駄となる電流を最小限に抑えることで、変換効率を従来品比で4.3ポイント増となる35.8%まで高めることに成功したという。

化合物3接合型太陽電池の構造の変化(今回、ボトム層をGeからInGaAsに変更することで、変換効率を向上させた)

なお、同社では、今回の開発成果を活用し、さらなる高効率化を目指した開発を引き続き行っていくとしている。