大手書店チェーンの米Barnes & Nobleは10月20日(現地時間)、米ニューヨーク市内で開催されたイベントで電子ブックリーダー『nook』を発表した。E Inkベースのメインディスプレイのほか、ナビゲーション用に小型のカラーディスプレイを備えており、これらコンテンツの制御のためにOSとしてAndroidを採用している。またAT&Tの提供する3GネットワークとWi-Fiホットスポットサービスで書店内や出先からコンテンツをダウンロードすることが可能。nookの本体価格は259ドルで発売時期は11月末のクリスマスシーズン、AT&Tネットワークの利用料は無料となっている。
電子ブックリーダー市場には米Amazon.comやソニーなどがすでに参入しているが、全米規模の書店網を持つBarnes & Nobleはこれら企業の強力なライバルとなる。その理由の1つは電子ブックコンテンツの強力なラインナップで、すでに同社がPC向けに提供している電子ブックストアがそのままnookで利用できることにある。B&Nの電子ブックはWindowsとMacのほか、iPhone/ iPod touch、BlackBerry、Motorolaのスマートフォンなど、すでに多くのデバイスに対応しており、nookはこれに加わる形となる。電子ブックのフォーマット自体はPDFとその出版向け標準化仕様であるEPUBを採用しており、nook上でPCのPDFファイルを閲覧することも可能だ。またベースがAndroidのため、実際にはPDF以外の各種メディアファイルの再生にも対応する。電子ブックの各タイトルは新作で9.99ドル程度の値段が設定されている。
nookのハードウェアは、前述のようにコンテンツ閲覧用のE Ink Vizplexディスプレイと、画面下部の小型カラータッチスクリーンから構成されている。タッチスクリーン部分はコンテンツカタログなどの機能を持つほか、電子ブック閲覧中のナビゲーションや検索等を行う場合のバーチャルキーボードの表示領域となっている。拡張スロットとしてMicroSDカードスロットのほか、mini-USB端子、ヘッドホンジャック、スピーカーを備える。USBはPCとの接続のほか、電源供給用となっている。またnook標準では最大1,500冊の電子ブックを保存するだけだが、16GBのSDカードを追加することで最大1万7,500冊までストレージ領域を拡張できる。
またAT&Tの3GとWi-Fiに接続できるネットワーク機能を標準搭載しており、Barnes & Nobleが同店舗内で提供しているAT&TのWi-Fiホットスポットサービスを介してコンテンツのダウンロードが可能なほか、店舗を離れても3Gネットワークを使ってコンテンツのダウンロードや各種操作が可能になっている。nookにはこれらサービスへの接続設定が標準でセットアップされており、本体価格以外の追加料金なしで利用できるのが特徴だ。これを利用してNew York TimesやWall Street Journalなどの新聞の購読サービスを購入して、毎日定期的に最新の紙面を手元に取り寄せるといった使い方が可能となる。このほか、友人に最大14日間まで手持ちの書籍を貸し出すことが可能な「LendMe」、複数デバイス間でバーチャルブックマークとして機能する「Reading Now」といった機能も利用できる。
なお、nookの発売は11月末を予定しており、現在は店舗または「www.nook.com」での事前予約のみ受付となっている。B&Nではnook発売記念として先着1万名にMalcolm Gladwell氏のベストセラー「The Tipping Point」の電子版をプレゼントすると告知している。