夏? ああ、そんな季節もありましたね。過ぎ去りし夏の日の事件を紐解いてみると、どうやら海の向こうのニュースばかり。しかも上位7位までと、今回も少々変則的な結果となっている。何となく下世話な話題が多い中、トップとなったのは米海軍の言論統制か? と思わせるニュースだ。

2009年8月のネット事件簿 Top7(※)

順位 記事 掲載日
1位 増えだしたTwitter系トラブル - 米海軍はSNS全面禁止令へ 8/5
2位 友人じゃなくてヨカッタ…… - Vogueモデル vs 匿名ブロガー裁判の顛末 8/20
3位 盗まれた"p2p.com"ドメインのゆくえ - 売却先はIT通のNBA選手だった!? 8/7
4位 モデル侮辱の"臆病者"ブロガーは誰だ!? - 米裁判で個人情報開示命令 8/20
5位 盗んだクレジットカード情報は1億3000万件 - 米で比類無きサイバー犯罪 8/19
6位 ボットネット制御に利用されたTwitter - Tumblrにも同様の手口を発見 9/19
7位 仰天! "里親募集中"の広告に我が子の写真が - 米国でネット詐欺事件 8/6
※ 各記事の掲載日(8/1~8/31)から1週間のアクセス数をもとにしています。

軍の情報をおびやかす民間向けサービス

今回のトップは、米海軍がFacebookやMySpace、TwitterなどのSNSの利用を全面禁止にしたというニュースだ。「米海軍内のネットワーク内からのSNSへの接続が禁止」という命令が発令され、その理由としてこれらのサイトが「情報流出に関連した高いリスクを抱えている」ということを挙げている。

タイトルにある「増えだしたTwitter系トラブル」というのは、スポーツ選手がチームキャンプでの食事への不満を漏らして罰金を科されたり、アパートの住人が大家に損害賠償請求を起こされた事件など、一般社会においてちょっと騒ぎになったことを指しており、米海軍が実際にSNSを悪用した情報漏洩事件に直面したというわけではない。

ついでに言えば、SNSの全面禁止は"米海軍ネットワーク内からの"利用についてであり、関係者がプライベートで利用することについては禁止されていない。まぁ、率直なところタイトルが少々思わせぶりすぎたかもしれない。

しかし、こうしたサービスに何らかの悪意を持った行為やコンテンツが含まれることは認識しておかなくてはならない。Webサービスそのものに問題が無かったとしても、SNSをプラットフォームとしたアプリや、専用クライアントなどに潜む危険性を全て把握することは難しい。大事になる前に危険因子の芽を摘むのは、軍の組織統制として基本的な対策だということなのだろう。

テクノロジーの発展は様々なハイテク兵器を生み出してきたわけだが、今では民間レベルのインターネットサービスが軍の情報の安全性を脅かす存在になっているのだ。インターネットが元々は軍事技術から発展してきたものであることを思うと、因果は巡るというか、皮肉な結果である。

ネットの平和には「直接対話」も

ネット上で自分を誹謗中傷した相手と、直接対話で和解……。なかなか度胸の要りそうな話だ。しかし、匿名で人をけなすような行為を行うのは、そうした行いが現実社会で表沙汰になると立場上よろしくない人物か、ネットがフラットであるのをいいことに著名人を叩いて注目を集めたい自己顕示欲旺盛な人物か……いずれにしても小心者と評されて然るべきだろう。

訴えを起こしたモデルは、彼女を侮辱した匿名ブロガーの電子メールアドレスとIP情報をブログ運営会社であるGoogleから開示された。電子メールで彼女からの連絡を受けたブロガーは、素直に電話番号を教えたらしい。小心者には正攻法、というのがポイントのようだ。

もう一つのポイントは、訴えを起こしたモデル本人がすぐにその番号に電話を掛け、「こんにちは、ご機嫌いかが?」と挨拶した後、今回の件を謝罪したということだ。弁護士を通さず、さらに相手の行為を許した上で、自分とどのような関係の立場なのかを聞き出したという。ブロガー側は電話口で何を言われるのか、内心ヒヤヒヤだったのではないだろうか。しかしここで相手を敵に回しては、必要な情報を得る機会を逃してしまうかもしれない。小心者を萎縮させず懐柔する、大人の対応だ。

この事件の裁判において、ブロガーの弁護人は「悪口や発散など個人の意見を伝えるモダンな場として考えている」と主張している。確かにブログは個人のメディアだが、論理的な個人の意見(それが批判であっても)と感情的な誹謗中傷を取り違えられては困る。少なくとも学校裏サイトレベルのことを大人がやるべきではないと、子供には示したいものだ。

日本においては、ネット上の誹謗中傷やいわゆる"荒らし"に対しては「徹底的に無視」が一般的な対処法となっている。そういう人もいるのだと、受け流すことも一つの"大人の対応"だ。しかし、特定の人物が侮辱行為を続けていることが明らかな場合は、いつまでたっても被害が止まないことになる。無視するだけでなく、今回のような直接対話を試みることも、ひとつの手段かもしれない。