Tridentの筆頭株主となるNXP

NXP Semiconductorsは10月15日、都内で記者会見を開催し、10月5日に執り行った米Trident MicrosystemsとのNXPのテレビシステム(DTV)事業およびSTB事業の事業統合に関する説明を行った。

同事業統合により、NXPのDTVおよびSTB関連の資産はTridentへと移るかわりにTrident株式の56%がNXPに現物支給されるほか、現金3,000万ドルをNXPからTridentへ投資する代わりに4%の株式を取得しNXPはTridentの60%の株式を保有することとなる。

DTVおよびSTB事業をTridentに譲渡する代わりにNXPはTrident株式の60%を取得することとなる

これにより、Tridentの従業員数は約2000名となり、売り上げの60%をDTV関連が、40%がSTB関連が占めることとなる。また、従来より互いにDTVおよびSTB関連事業を行ってきたことから、全世界の主要なTVメーカーおよびSTBメーカーをカバーすることが可能になるという。

日本法人のNXPセミコンダクターズ代表取締役社長のジェフリー・ブラウン氏

今回のNXPとTridentの協業の意義について、日本法人の代表取締役社長であるジェフリー・ブラウン氏は「DTVは2009年から2012年までのCAGRが11%、STBも同6%の成長が見込める重要な事業分野。しかし、こういった変化の激しい分野では、より小規模な事業体で、ビジネスを行った方がさまざまな状況に柔軟に対応できると判断し、戦略的な決断を行った」と説明する。

また、世界各地にある両社の拠点の統合も予定されており、アジア地域では日本を含め、両社のオフィスが重なる地域が多いため、各拠点の統合も視野に入れるとするが、「NXPが北米および欧州地域向けに保有している研究開発拠点である"Technology excellence"は技術サポートや技術動向の見極めなどのために残す」(同)とするが、事業統合後のアジア向けの開発拠点は中国に設立されるという。

赤がNXPのDTV&STB関連拠点で、緑がTridentの関連拠点。重なる地域がアジアでは多いため、統廃合も検討される予定

「NXPとしてはDTV用低価格SoCなどの登場が進んでおり、今後そうしたチップの活用でTVが家電とネットワークを接続するハブ的役割を担う比率が高まると考えている」(同)としており、そのために、新たなTridentではTVの将来に向けたネットワーク接続技術、Blu-rayや3D化への対応といった画質の向上にフォーカスしていくとしている。

TVの将来像。ネットワークへの接続、双方行情報交換などの知能化、画質向上などが見込まれる

NXPが狙う次のステップ - HPMS分野でリーダを狙う

また、ブラウン氏はNXPが次に狙う事業の方向性についての説明も行った。

同社は2006年8月にPhilipsより半導体部門を分社化する形で独立した半導体メーカーとなったが、2007年に同社の今後の方向性を設定、2008年以降はその戦略に基づいた事業買収、売却を行ってきた。今回のTridentへの事業統合についてもその一環となる。

NXPは2006年8月に独立後、自社の方向性を定め、その方向に向かい意図的に事業の買収/売却の戦略を実行してきており、結果としてコアになる分野、今後成長および発展させるために投資を行っていく分野としてHPMSを選択したという

では、この後、同社としてはどの方向にフォーカスするのか。ブラウン氏は「2009年から2012年にかけてはHigh Performance Mixed-Signal(HPMS)分野のリーダを目指す」と語る。なぜHPMS分野なのかについては、「今までNXPが築いてきた事業の核を考えると、HPMSに行き着いた。エンジニアが十分に居るし、技術知識なども豊富に保有している。日本でもハイパフォーマンスながら低コストな製品が要求されているが、NXPならそれができると考えている」(同)と説明する。なお、同社の売り上げの2/3に何らかのミクスドシグナル技術が搭載されているという。

また、その中でもRFのフロントエンドや車載半導体、ID関連を主軸に、ライティングや太陽電池、センサなどを成長分野と位置づけ投資を行っていくことを予定するほか、ディスクリートなどにも適切な投資を行っていくとし、「我々の目標は明確だ。これまではさまざまな分野を手広くやっていたが、今回の統合により、NXPがHPMSに注力していく姿が明確になった。これはカスタマに対しても明確なアピールになり、事業の成長に結びつくと信じている」(同)と今後のさらなる成長が今回のTridentへの事業統合で実現される道筋が提示されたとした。

NXPが注力する10種類のカテゴリ(左ほど特定分野向けとなり、右に行くほど汎用的となる。この内、売り上げ規模としては2/3がなんらかの分野でのミクスドシグナル製品となるという)