三洋電機は、ウイルスウォッシャー機能を搭載した業務用空間清浄システム「VW-SF10C」を、11月1日から発売する。同社の業務用空間清浄システムとしては、第3世代となるもので、同社業務用空間清浄システムを、「温度、湿度の調整だけでなく、空気の質までサポートする製品」と位置づけている。
三洋電機では、長年培ってきた電解水技術を元に、"水の力で、空気を洗う"をコンセプトとした「ウイルスウォッシャー機能」を開発し、2006年から同技術を搭載した製品を投入してきた。今年8月18日には、世界で初めて、ウイルスウォッシャーが、新型インフルエンザウイルスに対して、99.9%抑制効果があると発表。業界内外から大きな注目を集めている。
今回発売する「VW-SF10C」は、オフィスや医療施設、教育機関、銀行ATMといった人が集まる場所における利用を想定した業務用空間清浄システムの最新モデルで、新型インフルエンザウイルスの抑制効果を実証したものと同じ「除菌エレメント方式」の仕組みを採用したウイルスウォッシャー機能を搭載している。
同社のウイルスウォッシャーは、水道水をそのまま利用。塩化物イオンを含む水道水を電気分解し、ウイルスを抑制する「次亜塩素酸」と「OHラジカル」を生成。活性酸素がウイルスを取り囲み、ウイルス表面のスパイクを分解し、無力化するという仕組みだ。ウイルス、浮遊菌、アレル物質などを99%抑制することができる。
また、除菌エレメント方式とは、水道水を電気分解して生成される電解水を浸透させた気液接触フィルターに室内の空気を通過させることにより、効率よく電解水と空気を接触させ、空気浄化を行う方式。エレメント内を一回通過させるだけで、空気中に浮遊するウイルスや菌、花粉などのアレル物質などを大幅に抑制できるため、大空間での空気清浄を実現した。
VW-SF10Cは、給排水一体タンクと、電解水濃度を高めるパワフル脱臭モードの搭載により、従来モデルに比べて脱臭スピードを約3倍に強化。また水道水中の塩化物イオンが少ない地域や、不純物が多い地域で使用する場合にはタンクに定期的に塩を入れ、電解水中の塩化物イオンを一定濃度に保つ必要があったが、自動的の一定濃度を保つことができる食塩水自動投入装置を搭載し、使用時の手間を省くことにも成功したという。
価格は、54万6,000円。月産2,000台を予定している。
ウイルスウォッシャーの知名度は、シャープの「プラズマクラスターイオン」、パナソニックの「ナノイー」などに比べると低いが、業務用分野では数多くの実績がある。
たとえば、ワーナー・マイカル・シネマズの国内26劇場の全スクリーンには、ウイルスウォッシャー機能搭載の空間清浄システムを導入しているほか、米国のメッドフォードやJFK、ラガーディアの各空港の診療所に設置。新型インフルエンザの大量感染があったニューヨーク・クイーンズ地区の私立高校と公立高校のメディカルセンター、さらには、日能研、河合塾といった塾や予備校、医療機関、薬局などへの導入実績を持つ。
実際、業務用空間清浄システムのニーズは急拡大しており、同社の実績によると、2008年下期(2008年10月 - 2009年3月)に比べて、2009年度上期(2009年4月 - 9月)の実績は220%増となっているという。
三洋電機 冷熱技術開発センター VWプロジェクト 楽間毅課長は、「サービスとしての空気清浄から、企業の危機管理としての導入が拡大しており、保育施設、公立学校などを運営する地方自治体のほか、小売業、外食産業といった接客のために従業員がマスクを着用しにくい施設、学習塾やコールセンター、物流業などの高度なリスク管理が必要な施設にも広がっている」とする。
実際、導入したユーザーの間からも高い評価があがっている。
タクシーにウイルスウォッシャー機能搭載空気清浄機を導入したオービーシータクシーでは、「タバコを吸った人が降りた後もすぐにニオイが消える。また、搭載したタクシーを呼び出したり、並んでいても搭載されている車を選ぶということが起こっている。タクシーの中の空気が新鮮であるという評価をもらっている」としたほか、大規模空間清浄システムを導入したワーナー・マイカル・シネマズ茨木では、「映画を見た100%近いお客様が空気がきれいに感じたとし、今後、利用する際には空気がきれいな映画館を選ぶとしている。子供に安心して映画を見せたいという声に対応するためにも、ウイルスウォッシャーの効果は大きい」としている。ワーナー・マイカル・シネマズでは、ウイルスウォッシャーの運転前は22CFU/500Lだった浮遊生菌数が、1時間30分運転後には4分の1となり、3時間後にはバイオクリーンレベルにまで減少したという。
とくに、この2009年度上期に入ってからオフィスへの導入が増えており、販売実績を業態別で分析すると、2008年度下期には23%だったオフィスの構成比が、2009年度上期には32%へと高まっているという。また、医療機関、金融機関の構成比も高まっている。
三洋電機コマーシャルカンパニー空調事業部 星野典正事業部長は、「2008年度実績で、業務用システムで10億円、家庭用で25億円だったが、2009年度は業務用システムで35億円、家庭用で60億円を目指す。とくに、大空間向けの業務用空間清浄システムは当社だけが参入している分野であり、当社が先行している領域」とした。
同社では、顧客にあわせた空質ソリューションを、業態別に提案できるように、各業態別ウイルス対策提案サイトを用意。同サイトを通じた提案活動を実施する。また、業務用分野における導入促進を図る一方で、今後、これらの実績をもとに、家庭用分野におけるウイルスウォッシャー搭載製品の普及にもつなげていく考えだという。