10月11日(米国時間)からスタートしたOracle OpenWorld (OOW) 2009だが、カンファレンス本体の初日とも呼べる12日朝には米OracleのSafra Catz氏とCharles Phillips氏の2名のプレジデントによるキーノートが実施され、Oracleの近年の戦略とバックグラウンド、それらが顧客にもたらすメリットや将来の展望について説明が行われた。
Catz氏は「まずは最近のOracleの戦略の背景を知ってもらうことで、その先の目指すものを理解してもらいたい」と述べ、買収戦略がどのように顧客メリットにつながるのかの説明を行う。「顧客が求めているのは業務をより良くするためのソフトウェアであり、それらソリューション実現のために導入に際して試行錯誤に時間をとられるのは本望ではない。われわれはプロフェッショナルだ。ソフトウェアとともに、こうした経験や技術も含め、サービス要員を提供していくのがわれわれの使命だと考えている」と述べ、サービス部門の重要性やそれを実現するサービスメニューの必要性を指摘する。また、こうした「Complete, Open, Integrated」なソフトウェアスタック実現のために400億ドルもの資金を買収戦略に投じたことを強調している。
続いてスピーチを行ったPhillips氏は、この買収戦略立案の中心的人物だ。アプリケーションからミドルウェア、インフラまで、数多くの買収を重ねることで、Oracleを業界でもトップクラスのソフトウェアスタックを持つ企業へと成長させた。
特に最近ではFusion Middleware 11gとOracle Database 11g R2を発表し、さらなる機能強化を実現している。またOOW開催直前にはSunとのコラボレーション第1弾となる強力なハードウェア製品「Exadata Version 2」、そして11日に可用性を強化した新製品「Oracle VM 2.2」を発表している。「これらCompleteなソフトウェアスタック実現にあたって、Oracleは年間30億ドルを研究開発投資にあてている。顧客が求めるものをすべて揃え、将来の可能性を追求し続けるのがOracleだ」というのが同氏の意見だ。
こうした"Complete"なソフトウェアスタックを用意しつつ、Catz氏のいう「インテグレーションにおいて顧客の手間をかけさせない」という戦略を実現するのが「AIA (Application Integration Architecture)」だ。
AIAは近年のOracle戦略の集大成ともいえ、同時にさらなるアプリケーションやデータベース販売に結びつけるきっかけといえる。AIAでは複数のアプリケーションを組み合わせた際の業界標準的なシステムを構築するための仕組みがパッケージ化されており、従来まで必要とされていた煩雑なインテグレーション作業なしでシステム構築が可能となる。「エンジニアやコンサルタントが繰り返し繰り返し行っていたノウハウを集積したもの」(Catz氏)というだけに、パッケージとしての汎用性は高い。
ステージ壇上ではOracleの4人の製品マネージャが登場し、それぞれのソリューションをAIAで組み合わせた際の事例を紹介した。
1つはPrimaveraのProject Portfolio Managementソリューションを活用した例で、Primaveraがプロジェクトを管理しつつ、その実現性についてERPのE-Business Suite (EBS)やJD Edwardsのデータを参照しつつ、連携を行うという内容になっている。
これらアプリケーションの接続にはAIAとOracle SOAが利用されている。ユーザーはERPから搬出されたデータをPrimaveraで多角的に分析し、プロジェクトの事前分析や調整を行うことができる。
このほか、Siebel CRMとDemantoraを組み合わせたキャンペーン展開ソリューション、Oracle BIと各種製品群を組み合わせたリテール向けソリューションや予算管理ソリューションなどのインテグレーション事例が紹介されている。
Oracleの買収戦略が今後も続くことはCatz氏とPhillips氏両名が表明済みだが、今後は製品ポートフォリオの穴埋めだけでなく、例えばAIAのようにいかに製品同士を連携させ、ユーザーにそのメリットを訴えられるかが重要になってくる。Exadataのように垂直方向に突き抜ける研究開発がある一方で、こうした横連携の研究開発も継続して行われているというのが最近のOracleのスタイルだといえるだろう。