テレワークの導入や普及支援を実践している企業や団体を表彰する「第10回テレワーク推進賞」の授賞式が9月29日、都内で開催された。
同賞は、総務省や厚生労働省、経済産業省、国土交通省などの後援のもと日本テレワーク協会が2000年から実施している表彰制度。テレワークの導入による企業の経営効率の改善や雇用創出、CO2削減などを実践している企業や団体が自ら公募し、審査委員会の審査を経て、会長賞以下、優秀賞、奨励賞が部門別に選出される。
今回で10回目を数えた同賞は、「活力ある、明るい未来社会を目指して」がテーマ。2009年6月15日から8月7日にかけてエントリーが受け付けられた。表彰式の冒頭で挨拶を行った日本テレワーク協会の新会長 有馬利男氏は「政府がテレワーク人口倍増計画を打ち出して以降、テレワーカーは相当な数に増えつつあるだけでなく、導入の目的も幅広くなってきたと認識している。少子高齢化による労働人口の減少をはじめ、CO2の削減など、テレワークの重要性はまずます増していくだろう。今回で10回目となるテレワーク推進賞を受賞した事例をとおして、量だけでなく質や実態の向上につながることを願っている」とコメントした。
続いて登壇した、東京工業大学大学院 イノベーションマネジメント研究科 技術経営専攻教授で、今回の審査委員長を務める比嘉邦彦氏は「欧米の流れを受け、"サテライトオフィス"に端を発して始まった80年代に日本のテレワークは、当時予算も中身も欧米以上だったが、その後にバブルがはじけて逆転を許してしまった。2012年までに就労人口の20%をテレワーカーとするという政府の計画は、現時点ではギリギリ達成できそうだが、中身を見ると、内勤者のテレワークはまったく進んでいない状況だ。しかし、ここ2、3年は全体のレベルが上がっているようにも感じている。現在のテレワークの実態は、ミドルクラスの質が上がっている"ちょうちん型"で、上層部の質が進展していない状態。テレワーク普及の次の段階は、内勤者のテレワークで、来年あたりにはブレイクスルーが起きることを期待している」と、昨今のテレワークの状況への考察を語った。
テレワーク推進賞は、前回からエントリー事例を部門別に分けて審査が行われている。今回のエントリーでは
- 経営効率の向上および改善
- 雇用継続ならびに創出
- 環境負荷の軽減
- 地域活性化
- ワークライフバランスの向上
- 普及啓発貢献
- SOHOおよび自営型テレワーカーの育成や支援
- 事業の継続性の確保
- ソリューションの開発や活用
の9部門があらかじめ設定された。
今回、最高賞となる日本テレワーク協会会長賞には、「経営効率の向上および改善」部門にエントリーしたアクセンチュアが選ばれた。同社は、4,000名の全従業員数に対し、225名の正社員および障害者の契約社員を対象に、2008年7月からテレワーク制度を導入し、2009年7月1日現在で111名が利用。テレワークの利用にあたっては、社内ポータルサイトを通じて、利用者本人が申請を行い申請が完了すると直属の上司に自動的にメールが配信され、Web上で承認が行える体制がとられているという。また、具体的な効果として、残業時間の減少により、年間3,000万円の人件費が削減されたほか、オフィススペースコストとして年間1,500万円、離職率の低下により、広告費・採用費・研修費が年間1,000万円抑制された実績が報告されている。さらに、利用者のアンケート/ヒアリング調査では、97%の社員が「生産性が向上した」「変化なし」と回答したとしており、短時間で同等あるいはより質の高い成果を発揮できるようになり生産性の向上が確認できたという。審査委員会では同社の受賞理由について、「経営層の関わりが明確に示され、導入効果も数値的に検証されている。社内ヒアリングでも高い評価を得ており、約50%という実施規模も十分」と説明している。
また、優秀賞は5社が受賞。社宅の一室をテレワークルームとして利用し、社員に提供するなどユニークな取り組みが評価されたクエスト・コンピュータのほか、シグマクシス、SiM24(以上、経営効率の向上および改善部門)、富士通ワイエフシー(ワークライフバランスの向上部門)、KDDI(ソリューションの開発や活用部門)が選出された。
その他、奨励賞はベネッセコーポレーション(経営効率の向上および改善部門)、コクヨKハート(雇用の継続ならびに創出部門)、エヌ・ティ・ティ・ドコモ(ワークライフバランスの向上部門)など、民間企業10社と福祉法人1団体が受賞した。