ルネサス テクノロジは10月8日、カーナビゲーションなどの車載情報端末機器向けSoCとして、ポータブルナビやローエンドからミッドレンジの組み込み型カーナビなどの用途に提供している「SH-NaviJシリーズ」の第3弾製品「SH-NaviJ3(製品名:SH7777)」を発表した。即日サンプル出荷を開始、サンプル価格は6,000円としている。なお、2011年4月から月産3万個で量産を開始、2012年10月には月産40万個に引き上げる計画としている。

「SH7777」のパッケージ外観

ルネサス テクノロジ 自動車事業部 自動車情報系製品技術部 部長の平尾眞也氏

自動車分野、特に電気自動車に関しては「バッテリ駆動のため、搭載機器の電気の消費量がそのまま走行距離に影響してくる」(同社自動車事業部 自動車情報系製品技術部 部長の平尾眞也氏)ことから、低消費電力が求められるようになってきているという。そのため、同製品でも、従来の90nmの汎用プロセス(Gプロセス)ではなく、ハイエンド向けSoC「SH-Navi3」でも採用されている携帯機器向け65nm 低消費電力プロセス(LPプロセス)を採用することで、「パッケージサイズは従来品と同サイズの21mm×21mmで、消費電力1.5W(typ.)を実現した」(同)という。

従来のJシリーズで採用していた2D/3DグラフィックプロセッサをOpenGL ES1.1に対応させたことで、「PC上でのGUIやアプリケーションなどの開発が可能となり、その分、開発期間の短縮などが可能になる」(同)という。

ルネサスのカーナビ向けSoCロードマップ(SH-NaviJシリーズは普及機向けのシリーズとなっている)

「SH-NaviJ3」のコンセプトと搭載した車載情報端末が可能となる機能例

また、携帯機器向けSoC「SH-Mobile」シリーズで用いられてきた動画処理IPを流用、H.264やMPEG-4、VC-1形式などに対応するマルチコーデックのビデオプロセッサユニット(VPU5F)を搭載することで、VGAサイズでの30fpsのエンコードおよびデコードを実現している。さらに、オーディオ処理用に独自の24ビットDual Mac DSP(SPU2)を搭載したことで、MP3やAAC、WMAなどのデコードに対応しながら、ソフトウェア処理時に比べCPU負荷の低減ならびに消費電力の低減を実現している。

アクセラレータの搭載により、CPU上でソフト処理を行う時に比べ圧倒的に消費電力を低減することが可能となる

専用DSPの搭載により、音声処理時も消費電力の低減が可能

このほか、カーナビゲーションシステムに加え、リアシートでの映像表示の対応などもローエンド、ミッドレンジでも求められるようになってきているため、ディスプレイユニットを2チャネル搭載。これにより、WVGA(832×496画素)の画像を2系統表示可能なほか、1枚のパネルであれば、最大WXGA(1280×768画素)での表示が可能。加えて、デジタルRGB出力を24ビットに拡張したことで、より表示色の階調を詳細に表現することが可能になっている。

「SH-MobileJ3」の使用概要(メモリインタフェースはDDR2の間違い。なお、メモリスピードについては、CPU400MHzモード時は DDR2-400、CPU533MHzモード時は DDR2-355で駆動する。これは、VPU5FやSPU2といったメディア系IPを使用するシステムを組む場合には、CPUの負荷は下げられるため、400MHzモードを使い、その代わりにメモリバンド幅が必要になるため、DDR2-400が用いられる。一方、CPU負荷のかかるシステムを組む場合は、533MHzモードを使い、代わりにメモリバンド幅を抑えているという)

「SH-NaviJ3」を用いた際のシステム構成の例

なお、メモリはDDR2 SDRAM(DDR2-400/355)に対応。CPUコアには従来同様、同社の32ビット「SH-4A」を採用しており、従来の設計資産を流用することが可能である。最大動作周波数は400/533MHzで、処理性能は960MIPS(533MHz時)、浮動小数点演算器(FPU:Floating-point Processing Unit)の処理性能は3.73GFLOPSを実現している。

受注生産により提供される「SH-NaviJ3」の評価ボード(中央に配置されているのがSH7777)

SH7777付近を拡大して撮影したもの