10月4日、毎日新聞社主催の「『勝間和代のクロストーク』1周年記念イベント メディアの未来を対話しよう」が開催された。毎日新聞とそのWeb媒体「毎日jp」のクロスメディアで連載中の「勝間和代のクロストーク」1周年を記念したもので、同連載の読者など約150人が参加した。

多方面で活躍する勝間和代氏。ITグッズの詰まったバッグを持参して登場

イベントではTwitterを全面的に活用し、毎日jpの"オフィシャル"である「コッコちゃん」こと@mainichijpeditが会場のトークを実況中継。加えて動画中継が行われ、会場では無線LANと電源タップを用意。出演者・来場者や動画を見ているユーザーのつぶやきが会場内の2つのスクリーンに映し出された。手元を見つめる参加者も見受けられ、Twitterのタイムラインを踏まえながら進行するシーンもあった。

詳細については@mainichijpeditのログでご確認いただけます

「ネットの実名主義」について

はじめに勝間氏が今回のイベントの主旨を述べた。同紙の「クロストーク」は、マスメディアとネットの融合をコンセプトとした企画。紙面では提言のみ行い、回答はすべてネットで募集(投稿は実名)、その結果をまた紙面に掲載するというものだ。かつて例がなく、良い回答が集まるのか、実名主義に読者がついてくるかなどのリスクがありながら、毎回80件から多いと300件にも上る意見が寄せられているという。

「クロストーク」のWebサイト。連載初回のテーマ「マイカー 減らそう」には車関連の専門家を含めた多くの人が参加し、フラットな形で議論が続いた

オフラインのメディアに比べてネット上の発言は軽視される傾向があるが、勝間氏は「連載を通じてわかったのは、きちんと設計し、ユーザーが参加でき、発言に責任を持つような仕組みをつくれば、ソーシャルメディアは大きな可能性を持つということ」だと述べた。例えば何かの製品情報を探せば、広告よりも自然淘汰の中で市民が出した優良な情報が視界に入ってくるのがこれからのメディアであり、市民全員が"メディアを持つ"ことの力がまだ過小評価されているとした。

だが、ソーシャルメディアが毒になるか薬になるかは、正に使う人次第。だからこそ、ポテンシャルはありながら成長途上にあるソーシャルメディアという存在にとって「情報発信主である私たちが名前を公開し発言に責任を持つことが、社会や政治に対して提案・会話機能を持つ新しいメディアになれるかどうかの分岐点」であるというのが勝間氏の考えだ。

実名制のリスクとメリットは?

これに対して参加者から「実名で意見を出すときにどんなリスクが考えられるか?」という質問が挙がった。勝間氏の回答は「利害関係が対立することによるリスクが当然生じる。恐いのは物理的な危害、家族に対する危害を加えられること」。PCの電源を切っても回避できない現実のリスクについては「最悪何が考えるか考えて、対応できる範囲内で実名・情報開示すべき」だとした。

一方で、ネット上で実名・顔・電話番号を開示してTwitterや動画中継などの活動を行っている酒井りゅうのすけ氏は、来場者に対して「実名、顔がネット上でわかる人はどれくらいいますか?」と質問。約2~3割の手が挙がった。同氏は、「発言の担保として顔、連絡がとれる環境を用意していることで、ある程度の信用を持ってもらえる」と実名公開の理由を説明。2年間ほど活動してきて「デメリットそんなに感じていない」という。

また、TBSチャンネルの「ぶーぶ」こと@tbs_channelの人からは、テレビのドキュメンタリーなど硬く真面目なものが視聴者に受け入れられにくいことから、Twitterも実名制や硬派な議論にこだわりすぎるとその成長が阻害されるのではないかと質問。勝間氏もこの点には賛成で、「ルールが多いと敷居が高くなる」ため、「"すべて実名"のような厳しいプラットフォームになるのは反対」だと述べた。

今回は政治におけるTwitterの活用についても触れた部分があったが、実名制かつ硬い議論目的のプラットフォームが「あっても良い」とした上で、Twitterについてはソーシャルメディアの一つとしてそうなる可能性もある、という程度にとどめる考え方だ。

このほか、様々な方向から、来場者との"生クロストーク"が交わされた。以上がイベント全体を通してかいつまんだ内容となるが、実は勝間氏の冒頭の提言から、実名開示のリスクに関する質問の間には1時間ほど間が空いている。その間、会場で起こっていたこととは……。