景気後退は終了し、すでに回復の途上にあるとの楽観論が蔓延し始めているが、世界的企業の一部にはこうした意見を諫めるかのごとく、まだ景気は依然として厳しい状態にあり、回復には時間がかかると警鐘を鳴らすものもある。Microsoftもまたその1つだ。米Wall Street Journalの10月6日(現地時間)付けの報道によれば、米Microsoft InternationalプレジデントのJean-Philippe Courtois氏は同日に英ロンドンで開催された会議で、企業向け需要を中心に市場はいまだ厳しい状態あることを警告している。
10月22日にWindows 7発売を控えるMicrosoftにとって、こうした状態は深刻だ。特に前世代のVistaでは市場シェアの19%を占めるに過ぎず、不況による予算削減も相まって企業需要の低下が著しい。だがCourtois氏によれば、企業のCIOは今後12 - 18カ月で企業内のPC新調を見込んでおり、この際にWindows 7が需要回復の主要ドライバとなることが期待されるという。また昨年の企業のIT予算削減幅はおおよそ10 - 15%程度だったが、今後1年以内にいくつかの新規プロジェクトがスタートする可能性についても言及する。また主要国では厳しい状況が続くものの、新興国を中心に需要が堅調であることにも同氏は言及する。
最近の同社幹部の発言を総合すると、Microsoftは2段階の需要回復ストーリーを描いているようだ。1つはコンシューマ分野、もう1つは企業分野だ。10月6日に米ニューヨーク市でスピーチを行った米Microsoftエンターテイメント&デバイス部門プレジデントのRobbie Bach氏は米国の4人に1人以上が年末でのPC買い換えを検討しているとのデータを持ち出し、Windows 7搭載PCが年末商戦におけるPC需要回復に寄与する可能性を指摘する。またXbox 360の値下げやWindows Mobile 6.5端末のリリースなどにも触れ、「厳しい状況でこそ消費者はより厳しい目で製品を選ぼうとする」と今年の年末商戦にコンシューマ戦略をすべてかける意気込みでアピールしている。そしてコンシューマ市場の回復に続く形で、今後1年から1年半をかけて企業のIT投資需要の回復を待つという作戦なのだろう。
どの程度の回復となるかは未知数だが、企業需要の回復はすぐではないことは確かだ。まずは今年の年末商戦でコンシューマ市場がどう反応するかに注目したい。