2009年10月6日から10日までの5日間にわたり、千葉県幕張メッセにて、IT・エレクトロニクスの総合展「CEATEC JAPAN 2009」が開催されている。開催10周年を迎える今年のテーマは「デジタルコンバージェンスが明日をつくる、未来へつなぐ」としており、電子部品や半導体から、デジタル家電、携帯電話、各種サービスやコンテンツなどが一堂に展示されている。広い展示内容であり、一度にすべてを紹介するのは無理なため、今回は2つのステージの内、「電子部品・デバイス&装置」ステージを中心に半導体技術を用いたもので興味を惹いたものを中心にレポートしたい。
SPARC 64 VIII fxのウェハが登場
富士通は、同社のサーバといったエンタープライズ関連の製品のほか、コンセプトデザインとしての携帯電話などを展示している。また、半導体としては、45nmプロセスを採用したプロセッサ「SPARC 64 VIII fx」のパッケージおよび300mmウェハの展示が行われている。
SPARC 64 VIII fxはSPARCシリーズの次世代チップであり、8コア、5MBの共有2次キャッシュ、動作周波数2GHzでメモリコントローラも内蔵する。アーキテクチャとしてSPARC-V9および独自のHPC向け命令セット拡張(HPC-ACE)を採用し、1ソケットあたり128GFLOPSの演算性能を実現する。
このほか、同社ブースではカーボンナノチューブ(CNT)を全面に生成した300mmウェハや、GaN-HEMTウェハも展示されている。CNTの活用に関しては、適用の模索が続いており、産業競争力懇談会(COCN)が提案する「つくばナノエレクトロニクス研究拠点」のプロジェクトリーダーに富士通研究所の横山直樹氏が就任し、新たな研究拠点として活用される予定。また、実デバイスとしての適用としては、「まずははんだバンプの代替を狙う」(同社説明員)という。これは、半導体の配線層間のビアに用いるよりも、「半導体で生じる熱を逃がすという問題はユーザーにとって、すぐにでも解決したい問題。特にはんだに鉛が使用できなくなったため、さまざまな問題が生じている」(同)とする。将来的にはビアのみならず、グラフェンによる配線層そのものや、トランジスタ層の自己形成などへと応用を広げたいという。
直流給電で電力使用効率向上を狙うTDK
TDKのブースでは、コンセプト展示として、直流給電のデモおよび、プラスチック基板を用いたa-Siの薄膜太陽電池「フィルム太陽電池」の紹介が行われている。
直流給電は、すでにデータセンタなどで活用されている直流電力を交流に変換することなく、電気製品へ供給することで、交流化による変換ロスを防ぎ、消費電力の効率を向上させようというもの。例えば、同じLED照明と液晶テレビを使用した場合、交流方式の消費電力は108W程度であるが、直流方式に切り替えると、消費電力は85.2Wまで低下する、といったデモも行われている。これは、一般的にAC/DCコンバータよりもDC/DCコンバータの方が変換効率が高いため、より電力を効率よく使用できるため。
このほか、DCアタッチメントプラグを用いることで、従来のAC100Vと同様に、何も手を加えずに19V型の液晶テレビを駆動させるデモなども行われている。ただし、こうした直流給電を実現するためには、「前提として、太陽光発電などの直流発電装置が社会に普及すること」(同社説明員)が重要であるほか、「分散電源としてそうした電力が供給されることが望ましい」(同)としており、インフラ関連企業の協力やインフラの整備なども必要であるとする。
一方のフィルム太陽電池は、文字通りフィルムのように曲げることが可能な太陽電池。展示では、20mのフィルムで300Wの発電が可能としていた。製造方法はロール・to・ロールを採用しており、アプリケーションに応じた長さで製造することが可能だという。