富士通研究所と富士通は10月5日、共同で電子ペーパーを用いた外来患者案内ソリューションの実証実験を行ったことを発表した。同ソリューションは、富士通研究所が開発したカラー電子ペーパーと独自の無線システムを搭載した電子カードホルダーを電子カルテと連動させ、外来患者ひとりひとりに待ち人数などを配信するもの。
同ソリューションで用いる無線端末は、ICカードの読み取り機能付きの電子カードホルダーに、富士通研究所が開発した書き換え時以外は電力を使用しない低消費電力のカラー電子ペーパーを搭載することで、PHSや無線LANなどの携帯端末に比べて10分の1以下の消費電力を実現している。
無線通信規格はIEEE802.15.4に準拠しており、独自のプロトコルを追加することで、1台の無線アクセスポイントで毎秒14台の電子カードホルダーに案内情報を通知可能となっている。
今回、同ソリューションは7月から富士通病院に導入され、3項目について調査が行われた。項目の1つ目は「実運用時の省電力性能と運用コストの削減効果」で、電子カードホルダーへの平均配信間隔が4分で、電子ペーパーの搭載と無線系消費電力の制御により平均消費電力は0.1ワット以下という低消費電力による動作が確認できた。また、同電子カードホルダーの充電は1週間で十分という結果が出た。
2つ目は「無線配信性能の評価」で、1台の無線アクセスポイントがカバーする待合室で稼働する100台の電子カードホルダーに対して、個別に変動する待ち人数などの情報を10秒以内に配信できることがわかった。
3つ目は「病院スタッフや患者様による配信サービスの評価」で、患者に対し、診察までの待ち人数や診察室への呼び込みを通知する配信サービスを行った。357名の患者にアンケート調査を行ったところ、「待ち人数の更新や診察室への呼出しがわかりやすい」という回答が85%、「待ち人数の表示は必要だと思う」という回答が95%という評価が得られ、待ち人数や呼び出しの通知サービスの有効性を確認できたという。
今後は、病院の運用コスト削減や再来受付装置の代替による患者サービスの向上を追求すると同時に、入院患者様や病院スタッフ向けの情報配信ソリューションへの検討も進めていく。