今秋から冬にかけて再び流行の兆しが見えつつある新型インフルエンザ(Swine Flu)だが、この爆発的流行(パンデミック)がインターネットを危機的状況に陥れるかもしれない。米国土安全保障省(Department of Homeland Security: DHS)は2007年のレポートで、パンデミックが影響を与えるインターネット人口は最大で90%に上る可能性を指摘している。
ネット利用動向が新型インフルで変わる?
……とはいっても、別に新型インフルエンザが通信回線を通して送信されるわけではない。米Wall Street Journal (オンライン版)の10月2日(現地時間)付けの記事「Could Swine Flu Take the Internet Down?」によれば、米国におけるインターネットユーザーのアクセス動向がインフルエンザの流行によって変化し、トラフィックのピークタイムが一定時間に集中することでネットワークのパフォーマンスが大幅に低下するというものだ。
ここ最近のインターネット利用動向についてまとめたデータがある。1つは米Cisco Systemsのデータ特性をまとめたものと、もう1つは米Arbor Networksのまとめた時間ごとのトラフィックの推移だ。まずは後者の時間ごとの推移を見てもらうのが分かりやすいだろう。米国のインターネットには2つのピークタイムが存在し、1つはワークデイと呼ばれる主に仕事時間(午前9時~午後4時)、もう1つは夕方から夜にかけての終業タイム(午後4時~午後11時)に分かれる。使用回線とトラフィック特性を分析すると、終業タイムではDSLやCATVの割合が急激に増加しており、内容もゲームやビデオ視聴など、トラフィック負荷的に重いものが多い。両ピークタイムともに、最大でインターネット許容量の50%を超えているという。日中のピークは主に仕事によるもので、後者は子供や比較的若い大人層がプライベートで利用しているものだ。ちょうど学校が終わる時間からトラフィックが増えていることもわかる。
2つのピークタイムが重なるとき……
問題はここからだ。米疾病対策センター(U.S. Centers for Disease Control and Prevention)の予測によれば、6週間のスパンで判断した学校や企業の長期休校/休業率は50%を超える見込みだという。企業側では対策として在宅勤務の範囲拡大を考えており、一方で学校から解放された子供たちは休みの時間を利用していっせいにインターネットへと接続を試みるだろう。すると、これまで2つに分かれていたピークタイムが一度に重なることになり、すでに50%をオーバーしていた2つのピークがインターネットの許容量を超えてパンクさせる可能性が出てくる。
調査会社の米Nemeretes ResearchのプレジデントJohna Till Johnson氏によれば、インターネットのバックボーン自体はすでにこの種のトラブルに対して対策可能なように設計されており、運営側も特定のイベントなどを見越した対策を行っているという。だが一方で突発的なトラブルには対処が難しく、特に末端のアクセスポイントではスピードの低下や寸断などのトラブルに見舞われる可能性がある。
まだ可能性の域を出ないが、新型インフルエンザの大流行とそれに伴うインターネット上のトラブル。両者ともに注意して万全の備えをしたいものだ。