Wolfson Microelectronicsは10月1日(英国時間)、プログラマブルなパワーマネジメントIC(PMIC)製品「WM8320」を発表した。すでにサンプル出荷を開始しており、2010年第1四半期の量産を予定している。価格は米国での参考価格ながら、1万個で3.72ドルとしている。

プログラマブルPMIC「WM8320」のパッケージイメージ

WolfsonのGlobal Applications Engineering DirectorであるNick Roche氏

同製品は、同社が2009年7月に発表したPMIC「WM831x」シリーズに続くプログラマブルPMICの第2世代品。同社のGlobal Applications Engineering DirectorのNick Roche氏は、「第1世代の3製品(WM8310、WM8311、WM8312)はアプリケーションごとの住み分けを狙って機能を設定していた。それはWM8310がポータブルメディアプレーヤ関連、WM8311がPNDやデジタルフォトフレーム、WM8312が携帯電話などだが、市場の解析を進めた結果、もう1つの有望な市場が判明した。それがMIDやスマートフォン、Smartbook/Netbookの市場だ」と、WM8320がMIDやスマートフォンなどの市場に向けた製品だと強調する。

そうした市場に適応させるため、WM8320ではWM831xシリーズで搭載していたバッテリチャージャやパワー・パス・マネジメントなどの機能が省かれた代わりに独自技術である「BackWise」を採用したDC/DCコンバータを従来1つだけだったのを2つ搭載に変更しており、「2つのBackWiseコンバータにより、1.6Aまで対応可能となったため、LPDDR2を完璧にサポートできるようになった」(同)とする。

WolfsonのPMICロードマップとWM831xとWM8320の機能比較(WM831xの前にWM835xがあるが、これは別シリーズで、ソニーの電子ブックリーダなどにも採用されている実績を持つという)

同社のBackWiseレギュレータ技術は、0.5Vまで下げることが可能でかつ、高速な過渡応答を実現することができるというもの。また、Valley Mode Control(VMC)スキームを集積することで、外部点数の削減などを実現することも可能だ。

WM8320の過渡性能(出力電流に100倍程度の差があっても1nsで上昇し、その際の過渡的スパイクは競合製品比で1/10となる±30mVを実現するほか、一般的に複数使用するキャパシタも22μFのものを1つだけで済むという)

また、DC/DCコンバータやLDOのスタートアップなどをコントロールするためのOTP(One Time Programmable)メモリを搭載しているほか、外部EEPROMインタフェースおよびGPIOを搭載。これにより、システムに応じた製品設計をすることが可能となり、個々のシステムごとに仕様に対応するPMICを個別に用意するといった手間を省くことが可能である、

「こうした機能を活用することで、エンドユーザー側としても、例えばスマートフォンで音楽を聴きながらGPSを立ち上げ、通話を実行することが容易になる」(同)とするほか、「パワーも増しているため応答速度も向上しながら、バッテリの長寿命化が可能になる」(同)とシステム側だけでなく、エンドユーザーまでメリットが生み出されると同氏は説明する。

WM832xの概要図

PMICはそれだけでは意味をなさないため、プリケーションプロセッサと接続して使用することとなるが、「基本的にすべての種類のARMコアに対応する」(同)としており、プロセッサの動作条件が許すのであれば、先日ARMが発表したデュアルコアCortex-A9でも対応は可能だという。また、「アプリケーションプロセッサと同PMICを接続するだけで統合ソリューションを構築することが可能であり、外部キャパシタの使用数なども削減できるため、外部部品を含みながら、PCB上のエリアは100mm2程度の設計規模で抑えることが可能となる」(同)としており、システムの小型化も可能になると説明する。

なお、MIDやSmartbookなどの市場について同氏は「現在のMIDの主流はIntelのAtomだ。しかし、将来的にはARMコアをベースとしたものも登場すると見ている。また、SmartBookの市場も成長していくと見込んでいる。そうした市場に対し、最適な製品として適用されるように積極的にカスタマに提案していきたい」と語っている。