PCMの量産を計画

Numonyxは、現在サンプル出荷を行っている128MビットのPCM(Phase Change Memory:相変化メモリ)を2009年11月中旬ころをターゲットに量産化する方向で動いていることを明らかにした。

Nymonyxが提供しているPCM

この動きについて同社日本法人であるニューモニクス・ジャパンのEBG(Embedded Business Group)ジャパン 部長である外山大吾氏は、「ユーザーのニーズがあるのか、という疑問があったが、実際に引き合いをいただいており、将来を見据えた話し合いを進めている」と語る。

ただし、「今出しているサンプルの性能はほぼNOR型フラッシュメモリと同等であり、DRAMのみ使用していたユーザーからは入れる必要のないNORを入れる必要があるのか、と聞かれる」(同)としており、PCMを使うことで、新たなシステムの形を生み出す流れを作ることが求められているとし、「不揮発性という特長を持たせながらRAMのファンクションに近づければ、従来のRAMの領域を置き換えていけるはず」とNANDやNORからデータをDRAMにストアしてシステムを立ち上げる現状のシステムに対し、PCM1つでそれができるという点に対し、魅力を打ち出せれば、とする。

量産型PCMの製品名は「P8P」を予定(スペックは従来のサンプル品と変更はなし)

そのため、現在同社は既報のとおり、Samsung ElectronicsとPCMの仕様策定に関しての協議を進めており、「現在は携帯機器向けのLPDDR2 NVの仕様策定に向けて話し合っている段階」としている。現在同社がサンプル出荷を行っているPCMはNORのインタフェースであり、これにLPDDR2 NVのインタフェースが加わることで、システムのスタンバイ電流中におけるメモリの消費電力量も無視できない問題となっているほか、今後のプロセスの微細化に伴うメモリの供給に対するユーザー側の不安感に対してPCMが答えになるはずとの見方を示す。

しかし、いきなり現行のNORやNAND、DRAMがPCMに置き換わるかというと、そこはシステムの供給期間の問題などもあり、難しいのが実情だ。実際に同社でも「NORは65nmプロセス製品を提供している。次世代の45nmプロセス品も視野に入っている」と、しばらくは既存メモリが主流とする。その一方で、「32nmプロセスを考えると、コスト、性能の双方で厳しい可能性もある。そうした頃がPCMとの製品置き換えのタイミングだと思われる」ともしており、NORでのプロセスの微細化が難しくなってきているとする。

45nmプロセスのPCMが登場

こうした動きに合わせるため同社でも「45nmプロセスを用いて1Gビットを実現したPCMの開発を進めている」としており、2009年末から2010年初頭頃のサンプル提供開始を予定している。NAND型フラッシュメモリを用いると、通常ページの読み書きの際にはECC処理が必要であり、チップの積層により容量を増したものになると、そのコントロールが非常に面倒になる問題がある。そのため、同PCMではECCフリーを予定しているという。

すでに32nmプロセスでの開発も計画されているというが、「生産には200mmウェハを用いる」と、300mmウェハでの生産を否定する。これは、そこまでPCMを消費する市場が出来上がっていないためであり、将来的に市場が形成されれば必然的にコストメリットの追求などでウェハサイズは大きくなるものと考えられる。

また、同PCMは積層することで容量を増すことも可能だが、1Gビットとしたのは、「大容量の不揮発性メモリ市場はNANDがメイン。ここと勝負しようと思っても、PCMではコストが高すぎて勝負にならない」とのことであり、「それよりも先述のとおり、既存メモリの大容量化で取り残される可能性がある不安感のある64MB~512MB付近の領域での使用を視野に入れた」とする。この領域は、現状、「NANDで考えれば容量的には小さく、NORとしては容量が比較的大きいためコスト的に高くつく領域」であり、まずはそうした隙間の分野での適用を図っていく。

そのため、インタフェースとしてはNOR互換での提供となるが、「LPDDR2 NVも視野に入っているほか、その他のインタフェースもハードウェア的には難しくない」とする。しかし、他のメモリと比べた場合、NANDに比べては書き換え回数は高く、「スペックシートとしては108と表記しているが、ポテンシャルとしては1010程度まではいけるはす」とするものの、「DRAMに比べて書き込み速度が遅い」ため、マイコン側のサポートなど、PCMのメリットを出せるシステムのあり方を考える必要があると外山氏は指摘する。

PCM向けEAPを展開

実は同社、エンジニアなどに向けてPCMの情報などを提供するためのアーリーアクセスプログラム(EAP)の提供も開始している。同社のWebサイトのトップページのPCMをクリック、開いたページにあるEAPをさらに開くと、EAPの説明ページに到着。そこで、名前などを登録すると、「Thank you for joining the Numonyx Phase Change Memory Early Access Program!」と銘打たれたメールが届くので、そこに記載されているアドレスにアクセスすると、ホワイトペーパやデータシートなどを見ることができる。

NumonyxのEAPへのアクセスサイト(下のJoin Nowの画像をクリックすると名前などの登録画面にジャンプする。なお、登録画面は英語表記となっている)

現在は90nmプロセス品のデータだけだが、同サイトには45nmプロセスのLPDDR2対応のPCMなどのデータシートがもうすぐ登場する予定とされているので、興味のある人はアクセスしてみるのも良いだろう。

なお、外山氏はこうした同社の取り組みについて「サンプルの提供を経てPCMの市場開拓に向け本腰を入れた。EAPを開始したことで、さまざまなユーザーからの問い合わせを受けられるようになり、代理店でも扱いやすくなる。順次45nmの話もアップデートしていく予定だし、我々の固定観念から、そのシステムには"こう使うだろう"、というイメージがあるが、それを超えた使い方を求めている。気になる人にアクセスしてもらい、我々にダイレクトに声をと直接届けてもらえれば、その分野に適したメモリも開発していく方針」としており、今後2~3年程度で本格的にPCMの市場ができ始めるという期待を胸に多くのユーザーの意見を製品開発にフィードバックしていければとしている。