米Appleが携帯アプリのための専用ストアを開設して以降、ライバルの携帯各社も次々と対抗のアプリストアを開設し、つい先日には米Intelと関係各社がネットブック用のアプリストアを立ち上げるに至った。だが、このApp Store旋風はIT業界内部だけに止まらないようだ。今月中旬には米国政府が公共機関向けのクラウドアプリを集めた「Apps.gov」をスタートしており、そして今度はサンフランシスコ市が市民向けサービスの一環として専用アプリストアの「DataSF App Showcase」を公開している。
米カリフォルニア州サンフランシスコ市は今年8月、市の行政の透明性を高める施策の一環として、行政が提供しているデータサービスへとアクセスする方法をまとめた「DataSF.org」というサイトをWordPressサービスを使って立ち上げている。さらにその後、サンフランシスコ市長Gavin Newsom氏と、Tim O’Reilly氏やMatt Mullenweg氏などIT業界の重鎮との討論の結果、Gov 2.0を推進するアイデアの1つとして市専用のApp Storeの設立に至ったという。DataSF App Showcase立ち上げに際してNewsom氏はBlogへの投稿の中で「AppleのApp Storeでは6万のアプリが、Facebookでは35万以上のアプリがそれぞれ登録されている。では、政府用のApp Storeを開設しない理由があるだろうか」とコメントしている。
原稿執筆現時点でDataSF.orgには、公共機関が提供しているサンフランシスコ関連でのデータを活用したiPhone向けアプリやWebサービスなど11点が登録されている。市内の犯罪発生状況や詳細を一覧できる「Crimespotting」、入力した住所に応じて付近のニュースを知ることができる「EveryBlock」、サンフランシスコ周辺のレストランの衛生情報をまとめた「CleanScores」、リサイクルやゴミの処分方法がわかる「EcoFinder」などは、まさに市民向けのサービスといえるだろう。またiPhoneを使って出先で市営バスや地下鉄の運行状況や到着時刻がわかる「Routesy San Francisco」「BART Arrivals」などのアプリは、観光客やビジネスマンでも役立つ即効性のあるものだ。WebブラウザやiPhone用のアプリ以外にも、BlackBerry用のアプリも公開されている。このようなサイトを開設することで、今後より行政データを活用したアプリ開発を促すという狙いもある。
せっかくの行政サービスが活用されていないという話はよく聞くが、待っているばかりではなかなか誰も利用しようとは思わないものだ。存在をアピールし、サービスをより有用なものとするための方策として、DataSF App Showcaseは面白いアイデアの1つだといえるかもしれない。