ナイジェリア人を蔑視した映画や広告表現に、ナイジェリア政府が憤慨している。

ロイター通信が9月24日付けで伝えたところによると、問題となっているのは、8月に北米や英国で公開されて以降、ボックスオフィスでもトップ10にランクインするなど好成績を収めている映画『District 9』。南アフリカのヨハネスブルグの空に浮遊したまま動きがとれなくなった宇宙船に、最後の生存者として隔離された宇宙人難民を描いたSF映画だが、劇中に登場するナイジェリア人がギャングスターや人食い人種、売春婦など、野蛮や裏社会を想起させるイメージで描かれているだけでなく、そのリーダーの名前がナイジェリアの元大統領と同じ"オバサンジョ"と名づけられている。

これを受け、ナイジェリアの情報通信大臣のDora Akunyili氏は「これは南アフリカを舞台に主に南アフリカ人が演じているハリウッド映画だが、ナイジェリア人が大変ひどい描かれ方をしているので我々は抗議を行った。売春婦や犯罪者はどこの国にも存在するが、人食い人種というのはほとんどいない。我々の国にも存在しない。こんな表現は決して受け入れられない」と話しており、政府は国内でこの映画の上映や複製を禁じ、作品のプロデューサーにはナイジェリアの描写シーンを編集するように書面で通達したことを明かしている。

さらに、ソニーの「PlayStation 3」の広告キャンペーンに対してもナイジェリア政府は抗議と内容の編集を求めている。問題となったのはCM中、顧客が値段を訊ねる会話のやり取りにある「インターネットで見た情報を全部信じていたら、私は今すぐにでもナイジェリア人の大富豪にでもなっているよ」という部分で、信用できない人種のメタファーとしてナイジェリア人が扱われている。Akunyili氏によると、ソニー側はすでにナイジェリア政府に謝罪をしているというが、「ソニーはなぜ日本人を起用しなかったのか。日本には犯罪はないのか」と不満を示した。

一方、ナイジェリア政府では、"Nigeria: Good People, Great Nation"のスローガンのもと、国のイメージアップキャンペーンを今年3月に実施している。しかし、変わらぬこうした偏見に、政府は頭を悩まさせているという。