米Appleがオンラインストアでの楽曲の使用を巡り、大人気の米国人アーティストの所属事務所から著作権侵害訴訟を起こされていることがわかった。米Associated Press (AP通信) などが伝えている。オンライン配信における楽曲の権利は誰に帰属するのか、今後発生する可能性のある同様の訴訟の試金石となるかもしれない。
今回の原告はラッパーとして有名なエミネム(Eminem)の音楽発行所であるEight Mile Styleと、その関連企業のMartin Affiliated。9月24日付けで米デトロイト州の連邦裁判所に申請されている。Eight Mileの訴状によれば、レコード会社であるAftermath Recordsとの契約でエミネムの楽曲が市販されているものの、Eight Mileが許可を出しているのはCDでの販売に関してで、オンラインでの楽曲販売は許可しておらず、AppleのiTunes Storeに登録された93曲は契約外にあたるというものだ。だが、Eight MileはAppleに対して楽曲の配信差し止めまでは求めておらず、金銭面での要求にとどまっているという。これには楽曲販売におけるロイヤリティの分配に原因があるとみられる。
Appleによれば、iTunesでの配信1曲あたりに対してAftermathには70セント、Eight Mileには9.1セントが支払われているという。一方でEight Mile側の弁護士によれば、Appleはエミネムの楽曲のiTunes配信で250万ドルを不正に稼いでおり、このうちの46万6,915ドルは同氏の最大のヒット曲である「Lose Yourself」から得た利益だという。またAftermathも、このiTunesの楽曲配信で400万ドルの利益を得ているという。
iTunesではシングル1曲あたり99セントでの配信が行われており、こうした分配金に対する不満が訴訟の背景にあるようだ。今回の訴訟はiTunesでの楽曲販売におけるインセンティブ問題と同時に、オンラインでの楽曲配信では誰が権利を持っているのかという点に注目が集まることになる。またレコードからCD、CDからオンライン配信と瞬く間に移りゆく音楽の提供形態において、旧来の音楽著作権システムがどのように機能すべきかを改めて考えるきっかけになりそうだ。