インターブランドはこのほど、BusinessWeek 誌と共同で世界的なブランド価値評価ランキング「Best Global Brands 2009」 を発表した。同ランキングはグローバルな事業展開を行うブランドを対象に、そのブランドが持つ価値を金額に換算してランク付けするもの。ここでは、今年のランキングと傾向についてお伝えしよう。

インターブランド アジアパシフィック COO Neli Duffy氏

初めに、アジアパシフィック COOを務めるNeli Duffy氏が、「ブランドの意義に疑問を持つ人もいるだろうが」と前置きした上で、「ブランドの価値」について説明を行った。

「今年は日本や米国でGDPの二ケタマイナスが報じられたが、Best Global Brandsのトップ100に入っている企業のブランド価値は4.6%の減少にとどまっている。それは、ブランドが長期的に価値を維持できるからと言える。ブランドは企業の価値そのものであり、経済の混迷期においても価値を指し示すことができる。また、消費者の選択の要因として、今ブランドの価値が高まっている。不況に見舞われた今年、マネージドされたブランドは、耐久性のある価値の受け皿であることが明らかになった年だ」と、同氏はブランドの価値の高さを強調した。

インターブランドジャパン エグゼクティブコンサルタント 田中英富氏

インターブランドジャパンでエグゼクティブコンサルタントを務める田中英富氏からは、同社のブランド価値を評価する手法と今年度の順位と注目点について解説がなされた。

同社ではブランドの価値を評価するにあたり、「財務分析」、「ブランド役割分析」、「ブランド力分析」という3つのステップを踏んでいる。各ステップの内容は次のとおりだ。

  • 財務分析→「その事業がどれくらい儲かるか」を分析
  • ブランド役割分析→「ブランドがどの程度購買に役立っているか」を分析
  • ブランド力分析→「ブランドがどの程度将来のリスクに対する力があるか」を分析

具体的には、財務分析で企業の経済的利益を算定し、ブランド役割分析でブランドによる経済的利益を抽出し、ブランド力分析でブランド価値を割り引く率を決定する。

今年のトップ1はコカコーラで、以下、IBM、Microsoft、GE、Nokiaが続いている。田中氏によると、前年に比べて、トップ5は変わらないが、6位から10位は多少入れ替わりがあり、"今年らしい"動きがあったという。

第6位以降第10位までは、McDonald's、Google、Toyota、Intel、Disneyとなっている。今年の特徴的な動きとして、McDonald'の前年8位から6位への上昇、Googleの前年10位から7位への上昇が挙げられた。

Best Global Brands 2009 Top 100 資料:インターブランド

不況の影響を受けて、Merrill Lynch、AIG、INGといった金融業界のグローバルブランドが大きく価値を落としランク外となるなか、不況下においてもインターネット関連のブランドは価値を高めた。前年比25%増で7位のGoogleをはじめ、Appleが前年比12%増の20位、Amazon.comが前年比22%増の43位と、大幅にブランド価値を増加させた。

インターネット関連ブランドと並んで、今年は食品・飲料関連ブランドの躍進が目立ったという。その要因の1つに、「新興国でもブランド浸透に成功していること」がある。例えば、中国とケニアに研究拠点を新設するなど、新興国に集中投資を進めているNestleは前年比13%増で58位、アジア市場で成功しているHeinz(48位・前年比9%増)、Danone(60位・前年比10%増)、Budweiser(30位・前年比3%増)、KFC(61位 前年比3%増)などが、好調な食品・飲料関連ブランドとして挙げられた。

コンシューマーエレクトロニクスとITサービスブランドの価値  資料:インターブランド

一方、アジアブランドは全体的に苦戦しつつも、日本が7ブランド、韓国が2ブランドと前年と同数のブランドがランクインした。ランクインした日本ブランドは、トヨタ、ホンダ、ソニー、キヤノン、任天堂、パナソニック、レクサス。電気関連ブランドが不況の影響を受けブランド価値を大きく下げるなか、パナソニックは前年比1%減と踏みとどまっている。この要因について、田中氏は「NationalからPanasonicへのスムーズなブランド統合、グローバルでの"Eco idea"戦略の推進などがうまくいっているから」と述べた。

アジアブランドの順位とブランド価値 資料:インターブランド

記者からの「なぜ、ランクインする日本ブランドの割合が7%にとどまっているのか」という質問に対し、田中氏は「モノを作る"クルマやエレクトロニクス"といった産業は商品を改善すればブランド価値を高めることができる。これに対し、食品やインターネット産業は、いわば、"ライフスタイルをつくる産業"で、日本企業が苦手とする、ブランド戦略とワールドワイドでのコミュニケーション能力が求められるから」と説明した。