アイエニウェア・ソリューションズはこのほど、記者説明会を開催し、同社のGISエンジン「Maplet」を用いて不動産事業管理システムを構築したプリンスホテルの導入事例を紹介した。ここでは、プリンスホテルが同システムによって、どのようなメリットを得たのかを中心にお届けする。
まずは、アイエニウェア・ソリューションズでエンジニアリング統括部プリンシパルコンサルタントを務める近藤兼充氏から、Mapletに関する説明がなされた。
MapletはGISシステムを構築・運用しやすくするためのミドルウェアで、クライアント接続を制御するサーバ機能、地図に関連する機能を構築するためのAPI、電子地図を取り込むツールを提供する。
近藤氏は「Mapletは全国規模の企業地図システムを構築・運用することができ、多くの業務を1つの地図システムで管理可能だ。利用する地図システムに依存しない開発手法をとっているので、ユーザーの好みの地図を採用することができる」と、Mapletの長所を説明した。
プリンスホテルの「不動産管理業務システム」を実際に構築したのは、インフォロジーだ。同社の代表取締役社長である吉田潔史氏が、システムの構成や特徴について説明を行った。
プリンスホテルでは、2002年に川奈ホテルを取得したのに伴い、不透明だった土地・建物・権利などのGIS化を進め、2004年以降、会社再編に伴い全国に点在する資産整理が急務となったという。実施した資産整理は、「全施設鑑定評価・ファイリング」、「他社名義不動産の名義変更」、「建物全棟登記」、「所有不動産全謄本取得・ファイリング」、「各種情報のファイリング」、「土地・建物のGISによるWeb管理」だ。
同氏によると、全国に散らばる土地とその登記情報を結び付けて、一元管理できるようにすることは至難のワザだったという。また、これまでプリンスホテルではマイクロソフトのExcelを用いて情報を管理していたことから、インタフェースはExcelに似たものにすることで、ユーザーの使い勝手を確保したそうだ。「プリンスホテルからは、"通常業務を止めないでシステムを構築してほしい"という要望があった。そのため、ユーザーが新たなインタフェースの操作を覚えるために時間がかかることがないよう、Excelとそっくりの操作画面にした」(吉田氏)
同システムは固定資産を管理するための機能と棚卸資産を管理するための機能から構成されている。GISの導入によって、地図情報とデータベースの融合が実現され、資産情報を全国の地図上に表示・検索すること、各事業所からWeb経由で資産変動・課税情報の配信を行うとともに各種情報を取得することが可能になった。
同氏は、「Mapletの高速配信機能と日本全国の地図がこのシステムの開発を実現し、作業時間を短縮することができた」と話した。また、MapletのSDKが公開されている点もよかったそうだ。
プリンスホテルの不動産事業部部長である佐藤宗宏氏からは、同システムを導入したメリットについて説明がなされた。「同システムを導入する前は、図面と帳票を照らし合わせて作業を行わなければならず大変だったので、何とかシステムで作業の効率化を図れないかと考えた」と同氏。不動産事業資産に関するデータを一元化し、業務スキームに則した同システムを構築することにより、不動産事業にまつわる情報が体系化され、他部門の業務でもデータが利用できるようになったそうだ。
例えば、4人で1日かかっていた台帳や図面を用いて行う集計作業が、同システムを導入することで2~3時間で終わるようになったという。また、システム導入前は登記簿の履歴を確認するのに手間と時間がかかっていたが、同システムを利用すれば最終履歴まで簡単に確認できるようになったそうだ。
同氏は「不動産管理業務システムの導入によって、"帳票と図面の紐付け"という時間がかかっていた作業の効率が向上し、ストレスなく仕事ができるようになった。社員の間でも十分活用されて折、今でも改善点などさまざまな要望が出ている」と、同システムが有効に活用されている様子を披露した。