Analog Devices(ADI)は、2Gや3G、そしてSuper 3Gや3.9Gと称されるLTE(Long Term Evolution)および次世代の4Gと幅広い通信規格に対応する携帯電話基地局向けRF ICとしてPLL/VCO内蔵I/Qモジュレータ・ファミリ「ADRF670x」およびPLL/VCO(電圧制御発振器)内蔵I/Qミキサ・ファミリ「ADRF660x」を発表した。すでに国内でもサンプル出荷を開始しており、価格は1万個受注時で8.98ドル(米国での販売価格)からとなっている。なお2010年1月より量産出荷が予定されている。

「ADRF670x」および「ADRF660x」の概要図

2ファミリは、ADIのPLL/VCOシンセサイザ、ミキサ、モジュレータ技術などをベースに、1チップ化したもので、対応周波数帯に応じてそれぞれ4種類の製品が用意されている。

製品型番と各製品の対応周波数帯

ADRF670xファミリは、アナログI/Qモジュレータ、RF出力スイッチ、そしてVCO付きPLLを、1つのRF ICに集積したもの。モジュレータの帯域幅は500MHzで、特定の帯域だけでなく、複雑なIF(中間周波数)アップ・コンバージョン送信信号パスもサポートしている。また、ワイドバンドのマルチキャリアLTEアプリケーション向けの高出力パワー・レベルもサポートしている。

「ADRF670x」のブロックダイアグラム

一方のADRF660xファミリは、アクティブRFミキサ、シングルエンド50Ω入力用のRF入力バラン、そしてVCO付きPLLシンセサイザを、1つのRF ICに集積したもの。アクティブ・ミキサが6dBの電圧変換ゲインを提供するため、競合のパッシブ・ミキサ製品に比べて、IFアンプの追加の必要性が軽減されるほか、差動IF出力周波数は500MHzまでサポートしている。

「ADRF660x」のブロックダイアグラム

アナログ・デバイセズのインダストリー&インフラストラクチャ・セグメント コミュニケーショングループ フィールドアプリケーションエンジニアである日野原成輝氏

同社日本法人であるアナログ・デバイセズのインダストリー&インフラストラクチャ・セグメント コミュニケーショングループ フィールドアプリケーションエンジニアの日野原成輝氏は、「次世代携帯電話の基地局では、性能を犠牲にすることなく、高集積化を果たした小型のシステムが求められる」とする。また、これまでディスクリート製品を並べることで対応していた部分をRF ICが置き換えることに対し、「従来、ディスクリートで実現していたのは、RF IC化するとノイズなどの影響を受けやすく、性能の劣化が生じていたため。今回の製品は、1チップで従来のディスクリート製品を組み合わせたシステムと同程度の特性を実現しており、結果として従来システム比で基板サイズを約60%小型化できるほか、部品点数が減るため部品コストも約60%削減することが可能となる」(同)と語る。

従来、さまざまな部品を組み合わせていたシステム(左)が1チップで代替することが可能となる(右)

このため、6mm×6mmのLFCSPパッケージの同製品と周辺にフィルタをシステム側の仕様に応じて配置するだけでシステムの構築が可能になるほか、全製品がピンコンパチおよびソフトウェア互換となっており、かつ外部VCOなどとの連携も可能となっており、システム側の要件に応じたシステムを小面積で実現することができる。

基地局システムの構成例

なお、周波数別に製品を分けたことについて日野原氏は、「ある程度の間隔で周波数を区切ったのは、その方が内蔵しているミキサなどの歪み耐性などを最適化しやすく、より高い性能が出しやすいため」と説明する。

同社では、国内の携帯電話基地局ベンダに対しても積極的に提案をしていくことで、「今後の主流となるLTE、そして4Gの敷設の初期段階から参画することで、機器ベンダが提供する通信ソリューションの一助となるように取り組んでいく」(同)としており、2Gや3Gでの設備入れ替えに伴うコスト削減効果に加え、柔軟な次世代通信システムが低コストで、かつ開発効率を向上させながら構築できることをアピールしていければ、としている。