3つのシリーズに分かれたPSoC

Cypress Semiconductorは9月14日(現地時間)、同社のPSoCファミリを拡充させ、従来PSoCのほか「PSoC3」および「PSoC5」ファミリを追加したことを発表した。また、これに併せて都内で説明会を開催、カスタマなどにその概要を解説した。なおPSoC3はすでにサンプル出荷が開始されており、2010年第1四半期に量産を開始する予定。一方のPSoC5は、2009年第4四半期からのサンプル出荷を予定し、量産は2010年後半を予定している。

従来のPSoCは8ビットのM8Cコアアーキテクチャを用いた製品だったが、今回発表されたPSoC3のアーキテクチャは、8ビットの8051プロセッサをベースにすることで、同じ8ビットでも性能を従来の4MIPSから最大33MIPSに向上させることに成功している。また、PSoC5は、ARMのCortex-M3を採用することで32ビットに対応。性能も最大100DMIPSを実現する。

今回の新シリーズ投入によりPSoCは製品ラインナップとして1、3、5のそれぞれのナンバリングタイトルがつけられることとなる

Cypress SemiconductorのVice President, PSoC PlatformであるGahan Richardson氏

今回、32ビット対応のCPUコアとしてARMコアが選択されることとなった。ARMコアにはCortex-M3以外にもARM7/9/11といった旧来のCPUコア、そしてCortexシリーズとしてもCortex-A、Cortex-Rと別シリーズが存在し、Cortex-Mだけを見ても、Cortex-M1やCortex-M0というコアも存在する。その中でCortex-M3を選んだわけだが、その理由をCypressのVice President, PSoC PlatformのGahan Richardson氏に聞くと、「Cortex-M3を選択した理由は単純だ。低消費電力で性能が出せる。そして、旧来のARMコアに比べて将来性がある」との答えが返ってきた。Cortex-M0が同M3の下位品種であることを考えれば、この選択は妥当と言えるだろう。

また、PSoC3とPSoC5では、CPUコア以外の部分にも改良が施されている。中でも、最大の特長と言えるかもしれないのは、0.5Vから5.5Vまでに動作電圧範囲が拡張されたことだ(従来は1.71Vから5.25V)。しかも、アナログ部分まですべての回路が動作するとしており、「これにより、1セルだけの太陽電池でも十分駆動することが可能となった」(同)と説明する。加えて、そのアナログ部分として、搭載されているA/Dコンバータの分解能が20ビットまで引き上げられている。

PSoC1/3/5それぞれの性能比較

このほか、130nmプロセスを採用したことなどにより消費電力の低減に成功。PSoC3では動作時で1mA、スリープ時で1μA、ハイバネート時で200nAを実現しているほか、デジタル部分に今まで以上のファンクションが搭載できるようになり、従来はコントローラのみだったLCDについてもドライバが搭載された。

PSoC3/5のアーキテクチャの概要

ちなみに、これにより従来のPSoCが終息、というわけではない。今後は、「PSoC1」という新たな名称を与えられ、それぞれのPSoCがそれぞれに適した分野に向けて提供されることとなる。

各PSoCのポジショニングとPSoC3/5の製品ラインナップ

新設計ツールも登場

また、CypressではPSoC3およびPSoC5の登場に併せて、2製品に対応する設計環境「PSoC Creator」を発表している。同社のWebサイトにおいて、ダウンロードが可能だ。

PSoC Creatorのスクリーンショット

Richardson氏は「カスタマが考えたことをソフト側が受け止め、柔軟に実現することが必要」とし、「我々が目指したのは開発者のアイデアを気軽に実現するソフトを開発すること」であり、それは例えばあたかもホワイトボードにかいたイメージをそのまま実現できるようにすること、と表現する。

同ツールは大きく分けて2つのことができる。1つは回路図を描くこと。そしてもう1つがCPUに流すファームが書けるということ。回路設計においては、「データシートなど面倒なものを読まなくても、画面上のコンポーネントから機能を選択するだけで相当な部分の構成が可能」(同)であり、実際にこれまで設計ツールを使ったことのなかった同社日本法人の広報担当者が使ったところ、ものの数分で回路が出来上がったというほど、使い勝手が高いという。

直感的な操作でデザインをしていくことが可能

また、同社では、同ツールの提供に併せて2つの開発キットも用意している。1つがPSoC3 FirstTouch Starter Kit「CY8CKIT-003」であり、各種センサやソフトウェアが含まれており、「試しに使ってもらえる構成にした」(同)としており、価格も49.99ドルとなっている。

もう1つのキットはPSoC Development Kit「CY8CKIT-001」で、PSoCのすべてのサポートを提供するもの。PSoCの開発基板のほか、周辺のプラグインボードなども含まれており、設計開発ツールとしてPSoC CreatorおよびPSoC Designerが含まれており、価格は249.00ドルとなっている。

開発キットも2種類用意

なお、Richardson氏は、これらのハードウェアとソフトウェアの提供について、「PSoC3とPSoC5でリソースの拡大を実現し、その利点を最大に生かすことができるソフトと開発キットも用意することができた。これらは、組み込み分野の将来のデザインを実現するものであり、ゴールはシステムエンジニアが、新しい世界を切り開くためにPSoCを活用してもらうことだ」とコメントしている。

PSoC3/5によって、組み込み分野を新たなステージに引き上げるとする