産業技術総合研究所(産総研)の先進製造プロセス研究部門 機能モジュール化研究グループ、ファインセラミックス技術研究組合(FCRA)、日本特殊陶業、東邦ガスは、固体酸化物形燃料電池(SOFC)の多用途展開を可能とするマイクロチューブ型SOFCの高集積化モジュールを開発したことを明らかにした。

開発されたマイクロチューブ型SOFC高集積モジュール

従来、SOFCは800℃以上の高温で運転されるため、適用分野が限られており、低温動作や急速運転の実現が課題となっていた。

各種燃料電池の開発状況とコンパクトなSOFC開発への要求

今回の成果は、急速起動・停止に向く構造であるマイクロチューブ型SOFCを高集積化、高イオン伝導性材料として知られるガドリニア固溶セリアおよびスカンジア安定化ジルコニア系電解質を用いることで、50W級モジュールでの発電性能を確認したというもの。

具体的には、部材の形状精度を向上させて作成した15~30W級の集積ユニット(3並列9-15段直列)を複数組み合わせることで、任意の発電出力が得られるモジュールの作製が行われた。同モジュールは、マイクロチューブ型SOFCを3並列15段直列で構成した集積ユニットを2個並列で接続したものでありセル数は90本、集積ユニットあたり体積発電密度2W/cm3でモジュールの発電を行い、発電効率40%以上において出力50W以上を得ることに成功した。また、燃料利用率の低い条件では、さらなる高出力が得られることも確認したという。

小型高効率SOFCセルとモジュールを開発

さらに、200W級のモジュールも開発、評価を実施したとしている。これは、集積ユニットを8個集積した構造だが、ガスマニホールド、集電構造も含めた発電ユニットとなっており、大出力化への道筋が開かれたとするほか、小型・高出力化にも有効であり、今後、マイクロチューブ型SOFC高集積型モジュールを開発するための製造・評価技術が確立できたとしている。

50W級モジュールの発電試験結果

なお、産総研では、今回開発したモジュールにより、小型移動機器用電源となる数10Wクラスから、自動車用補助電源、家庭用電源への適用可能な数kwクラスまでの実用化展開が加速していくものとしており、今後はセル、モジュール構成の改善を進めるとともに、さまざまなシステム仕様に対応できるモジュールの実現に向け、さまざまな作動条件での検証や、性能向上、耐衝撃性が高く、急速起動が可能な発電モジュールの実現に向けた開発を行っていくとしている。