米Freescale Semiconductorの日本法人であるフリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは9月9日、同社のプライベートショー「Freescale Technology Forum Japan 2009(FTF Japan 2009)」を開催。併せて、同社の組み込みプロセッサ「QorIQ」としてOA/インダストリアルアプリケーション向けに特化した「P1022」「P1013」を発表した。P1022は、2010年初頭のサンプル出荷を予定しており、サンプル価格は1万個購入時で42.41ドルとしている。
QorIQはネットワーク機器の高性能化要求とそれに伴う消費電力の増大に対応するためにマルチコア化と低消費電力プロセス技術を取り入れた組み込み向けプロセッサファミリで、マルチコアとアクセラレータが組み合わせられた構成となっている。
また、45nm SOIプロセスで製造される1コアから8コアまでの同ファミリ全体でプラットフォームの互換性が確保されている。今後は2011年に32nm SOIプロセスを採用した第2世代QorIQが、2013年頃に22nmプロセスを採用した第3世代QorIQがそれぞれロードマップとして提示されている。
P1022は2コアプロセッサで、P1013が1コアプロセッサとなっている点以外はすべて共通となっている。2製品の動作周波数は1067MHzで、OA機器や産業機器といった低消費電力と高いエネルギー効率が要求されたアプリケーション向けで、「今回のQorIQは日本市場に合致したものとなっており、ネットワーク機器向けQorIQに比べ、消費電力を下げながら、LCDドライバを内蔵することに成功している」(フリースケール・セミコンダクタ・ジャパン マーケティング本部 ジェネラルマネージャーの伊南恒志氏)とする。
具体的なターゲットアプリは、ネットワーク接続が求められ、ディスプレイが搭載されているオフィス機器とのことで、多機能プリンタ(MFP)やビデオ監視システム、ストレージ機器とするほか、FA機器や産業用の制御装置なども想定されている。
特にMFPは、「各国で電力規制の対象となっていたりもしており、スタンバイ時でシステム全体で1W以下の達成が求められている」(同)とするが、ネットワークに接続することで、特に動画系に関する性能要求は増大し、しかもアプリケーションを載せやすいJavaなどへの移行によるさらなるCPUの負荷増大という問題があるため、プロセッサの消費電力を下げることは難しいという。
QorIQの基本的な部分は大原氏が2008年のFTF 2008 Americaでの内容をレポートしたものと変化はない。ただし、P1022/1013では、スタンバイ電力の低減のために動作モードは6つ(RUN、JOG、Doze、Nap、Sleep、Deep-Sleep)であり、しかもJOGモード時の動作周波数は内部のPLLが許す限りダイナミックに変更(600~1067MHz)することができる。また、Deep-Sleepモードにおいて、従来のPowerQUICC IIIのMPC8536Eではパケット受信ごとにコアを起動させる必要があったが、今回はイーサネットからのパケットをある程度DRAM(DDR2/DDR3)にバッファすることが可能であり、ほかのイベント処理時にDeep-Sleepモードから復帰して一度に処理といったことができるため、パケットを取りこぼすことなく、かつコアを起動する必要がなくなる。そのため、Deep-Sleepモード時の消費電力は200mW以下を実現している。
また、PCI ExpressはGen1ながら、×4、×1、×1の3ポート構成を実現しているほか、プリント基板はコスト低減が可能な6層基板に対応する。
動作時の消費電力はP1022で3W(typ)以下としており、「同等性能の従来品の1コアCPUに対して、ワット当たりの性能は約1.9倍となる」(同)とするほか、「1コアデバイスで処理した場合に比べ、AMPで最大82%、SMPで最大78%の性能向上を実現する」(同)という。
なお、Deep-Sleep時の200mWという値について同社は、「システムベンダなどとの話合いで、システム全体で1W以下の実現に向けて、プロセッサが200mW程度であれば全体で1W以下は可能との結論に達した」としている。