Adaptecは9月9日(米国時間)、I/O負荷が集中するデータセンタやクラウドコンピューティング環境下でのパフォーマンス向上を実現することが可能なSSDキャッシュパフォーマンスソリューション「MaxIQ」を発表した。受注はすでに開始しており、出荷は9月30日からを予定している。価格は国内はオープン価格だが、米国の参照価格は1,250ドル程度としている。
同ソリューションは、同社のRAIDカードである「Series 5」「Series 5Z」「Series 2」にSSDとSSDコントロール用のソフトウェアをRAIDコントロール用ソフトウェア「Adaptec Storage Manager(ASM)」に追加することで、SSDをHDDのキャッシュとして活用しようというものである。
同社では、「SCSIの時代、データセンタなどではコストパフォーマンスを重視していたため、我々のようなベンダは早い製品をいかに安く提供するかが求められていた。しかし、現在は、いかにTCOを削減するか、製品だけでなく、トータルのランニングコスト低減ならびにアプリケーションとして見た場合のコスト削減が求められている」(アダプテックジャパン 代表取締役で北アジアセールスの稲葉知彦氏)としており、RAID+αのα部分としてデータプロテクションなどの機能や、ストレージの消費電力削減が可能な「インテリジェント パワーマネジメント機能」、ゼロメンテナンスが可能なバックアップ機能を搭載したRAIDの提供を提供してきたが、今回のソリューションもその系譜に連なるものとなっている。
「例えば日本の事例としては、専用のホスティングサービスを活用し、自社Webでサーバを持たないという選択肢が中小企業を中心に増えてきている。結果として、サーバはデータセンタに集中することとなり、仮想化も進んできており、そうなるとより高性能なディスクアレイが要求されることとなる」(同)。そこで、HDDよりも高速なリード、ライトが可能なSSDに光が当たるわけだが、SSDはコストが高いわりにはHDDに比べて圧倒的に容量が少ないということが問題となる。データセンタすべてのアレイをSSDに変えようと思うと、相当なコストが必要となることは現状、変えようのない事実であろう。
MaxIQは、RAIDの論理デバイスにキャッシュとしてSSDが追加される形をとる。管理はASM上に追加されるので、管理者は追加の画面などに悩まされることはない。搭載されるSSDは信頼性、安定性を考慮してIntelからSLCタイプの2.5インチSSD「X25-E」の32GB品をOEM供給で受ける。ただし、単なるラベルの張替えではなく、「専用の暗号化鍵を搭載しているため、市販のSSDと変えようと思っても認識は不可能。暗号化鍵はSSDをフォーマットしても消えない」(同)という。
基本的な使い方は、例えば4ポートのRAIDカードの場合、「大体がミラーリング用ドライブで2ポート、ホットスペアで1ポートの使用で1ポートが余るような使い方だった。その余ったポートにSSDを追加してもらうことで簡単にSSDをキャッシュとして扱うことができるようになる」(同)という。なおSSDは1コントローラにつき最大4台まで接続することが可能だ。
では、どれくらいのパフォーマンスを発揮するのか。同社ではリードのフェッチが多い分野で特に効果を発揮できるとしている。こうした分野での使い方としては、通常、データを読み出す時、HDDにリードコマンドを入れて、SSDにフェッチコマンドを溜めることで、読み込んだデータをSSDにキャッシュとして残すことで、キャッシュ上に存在するデータについてはHDDにアクセスせずにSSDから読み出すことが可能となる。「社内でのデモでは、確かにキャッシュが溜まってない状態ではHDDにアクセスするが、キャッシュが溜まると、逆にHDDにアクセスしなくなり、すべてのデータをSSDから引き出すようになり、アクセスされるまでHDDを停止させることができるようになった」(同)としており、公称で最大5倍のリードIOPS増加としているが、「社内での実測値はそれ以上の値を示した」(同)とする。
こうしたHDDとSSDの組み合わせを、同社では「High Performance Hybrid Array(HPHA)」と呼んでいる。「HDDだけ、SSDだけ、ではできないことができるのがHPHA。パフォーマンスを向上させながら、電力を下げることができるため、パフォーマンスが足りないから新しいサーバを増やす、ということが必要なくなる」(同)としており、TCOの削減が要求されるサーバ分野にとっては少しの追加投資で性能向上と電力削減の双方を実現できるメリットを強調する。
同ソリューションの主なターゲットは「Apache HTTP Server」のほか、MySQLのようなDBアプリケーションで、「Apacheについては社内でテストを行っているほか、外部でのテストも実施している」(同)という。また、データセンタで運用した場合のシミュレーションや、サーバベンダでの評価なども進められているという。
なお、国内への普及については、「価値、コンセプトが新しいため、どれくらい理解されるかは不明」(同)とするも、「ビジネスのフレキシビリティの拡大や差別化といった付加価値を打ち出せるため、着実にアタッチレートを高めていくことを目標とする」(同)という。
また、稲葉氏は「かつてSCSIの時代、Adaptecは1時代を築いた。HPHAといったグリーンIT、TCOの低減を意識した戦略を打ち出していくことで、RAIDカードでもAdaptecを買えば問題ない、と言ってもらえるようになるための努力を続けていく」と今後の抱負についても語ってくれた。