米VMware CEOのPaul Maritz氏 |
VMworld 2009では、「vCloud」というキーワードが頻繁に登場した。初日基調講演のレポートでも簡単に触れているが、この概念についてもう少し補足しておこう。
vCloudは、VMwareが提供するクラウド技術の総称だ。ベースとなっているのは、同社の仮想化プラットフォーム「VMware vSpher 4」。大規模環境にも対応する同プラットフォームを利用して、インターナル(企業内)クラウド環境やエクスターナル(外部)クラウド環境を構築しようというものである。
VMwareが"クラウド環境にあってしかるべき"と考えているのが、異なるクラウド環境間でのアプリケーションの移動を可能にする機能である。同社 CEOのPaul Maritz氏は、「現在のクラウド環境は、アプリケーションのアップロードはできても、それを取り出すことはできない。また、アプリケーションを止めずにクラウド環境を代えるのも難しい」と説明。このような状況では、リソースが足りなくなったときに一時的に外部クラウド環境を利用する、などといった使い方が難しく、「クラウドのメリットが損なわれる」(Maritz氏)という。
そこで、VMwareでは、同社が以前から提供してきた「VMware vMotion」を活用して、インターナルクラウド環境とエクスターナルクラウド環境、あるいは異なるエクスターナルクラウド環境間でのアプリケーションの移動をオンデマンドで実行できるようにすることを大きな目標として掲げている。
すでに、そのための実証実験もパートナーと協力して進めている。2日目の基調講演に登壇したVMware CTOのStephen Herrod氏は、米Cisco Systemsと米F5 Networksの事例を紹介。Cisco Systemsでは、Data Center Interconnectを利用して200km離れたデータセンター間で仮想マシンの移動に成功。F5では、iSessionを使って同様に遠距離データセンター間での移動を実現していることを説明した。
また、vCloudについては、昨年のVMworldで「VMware vCloud Initiative」を発足したことを発表したが、今年のVMworldでは、VMwareが「VMware vCloude API」を作成し、同イニシアティブのDistributed Management Task Forceに提出したことが報告された。VMware vCloude APIは、クラウド環境の構築に必要な機能を提供するインタフェースで、1000を超えるパートナー(サービスプロバイダー)向けに作成されている。サービスプロバイダーは、同APIを使うことで、他との互換性を確保したかたちで独自のクラウド環境を構築することが可能だ。
なお、VMware vSphere 4(もしくはVMware Infrastructure 3)を活用したクラウド環境は、すでに一部の企業でサービスを開始済み。VMworld 2009では、AT&TやVerizon、terremark、Savvisといった企業のものが紹介された。
また、「vCloud Express」というプログラムも開始されている。こちらは、「登録後にすぐに利用でき、使用した分だけ課金されるタイプのエクスターナルクラウド環境」をvSphereを活用して構築した場合に、VMwareによる認定が行われ、ロゴが配布されるという内容になっている。すでに数社が対応サービスを発表しており、米Terremarkの「vCloud Express」(プログラム名と同名のサービス)など、実際に利用できるものもある。