米Gartnerは9月2日(英国時間)、「Gartner Identifies Ten Enterprise Architecture Pitfalls (Gartnerが発見したエンタープライズ・アーキテクチャ 10の落とし穴)」と題したシステム構築における10のポイントを発表した。「落とし穴を避けることはそこに落ちて脱出するよりも簡単。それがリスク軽減やメリットの享受、ITシステムの信頼性改善につながるだろう」というのが、同社リサーチVPのScott Bittler氏の弁。さっそくチェックしてみよう。

1. The Wrong Lead Architect (間違ったリードアーキテクトの存在)
Gartnerがエンタープライズ・アーキテクチャ(EA)における最大の問題として挙げたのが、リーダーとして無能なチーフアーキテクトの存在だ。自身はEAを熟知していても、リーダーシップの能力が欠如していることで、たとえ組織的な構造やスタッフのレベルが高くても問題を解決できないことがある。そういう人物には速やかに退場してもらい、熱意や情熱、コミュニケーション能力、そして立派で戦略性のあるような"ソフト"な人物に置き換えるべきだろう。

2. Insufficient Stakeholder Understanding and Support (関係者の理解とサポート不足)
関係者の理解とサポート不足は、「EAチーム外の従業員がEAの開発に参加していない」、「EAのコンテンツがプロジェクトで利用されていない」、「管理者らがEAの価値を疑問視している」といった時に発生する。その解決策は、EA教育やコミュニケーションを最重要課題とし、EA実行部隊を支援すること。「解決のカギは、初めに"セールス"を行い、構築は次にすること」とはBittler氏のアドバイス。

3. Not Engaging the Business People (実務集団の不在)
ITとビジネスのゴールがきちんと定められていない場合、"非技術系"の人々が"技術的な"決断をするといった問題が生じることがある。すると、EAアーキテクトらはプロジェクトに対して反動的になったり、非常に戦術的になったりする。こうした事態を打開するため、GartnerではEA技術者らをビジネスの中身の開発に関わらせ、ビジネスアーキテクチャの中で他の従業員との共同作業を行うよう推奨している。

4. Doing Only Technical Domain-Level Architecture (技術領域限定のアーキテクチャ)
こうした時代遅れのEAアプローチは今でも一部の組織で行われており、いわゆる技術アーキテクチャよりも幾分か視点が狭い。全体的なEAのベストプラクティスとはビジネス、情報、ソリューションの3つのアーキテクチャを含んだ、より広範囲のものだ。

5. Doing Current-State EA First (現状のEAにまず手を付ける)
成功するEAでは規範的な手順書が提供されるが、現行で利用しているEAでは提供されない。これはEAの価値の提供が遅れるだけでなく、将来を見越したEAの構築の妨げにもある。「現行のEAという簡単な問題にまず目を向けがちだが、代わりにビジネス上のバックグラウンドを確立し、まず将来的なEAに目を向けるべきだろう」とBittler氏は説明する。

6. The EA Group Does Most of the Architecting (EA部門が構築のほとんどを行う)
これは落とし穴だ。なぜなら、こうして出来上がったものは大抵ビジネス側からの提案とはかけ離れたものである可能性が高く、当然会社のためにもならない。EAアーキテクトの仕事は組織に完成品を押しつけることではなく、EAを構築するプロセスを率いていくことだ。構築にあたっては仮のチームを編成し、コンセンサスを探るべきだろう。

7. Not Measuring and Not Communicating the Impact (見通しやコミュニケーションの軽視)
EAの価値とはしばしば遠回りなものであり、組織のすべての人間にとって明確であるとは限らない。これがプログラム作業の失敗にもつながる。EAアーキテクトはプロジェクトに応じたサクセスストーリーを紹介するスライドを作成したほうがいい。ここにはプログラミングにおけるEAの見通しやドキュメントも加えておくとよいだろう。

8. Architecting the ‘Boxes’ Only (部門ごとのアーキテクチャに固執する)
ビジネスにおける"アジリティ"や"インテグレーション"を改善することは重要だ。だが、プロセスや情報、技術/ソリューションモデルにおける、"Boxes"と呼ばれる各部門向けの標準の確立についてはそうではない。インテグレーションと互換性における標準はEAにおける優先順位の高い事項であり、単なる技術アーキテクチャよりも重視されなければならない。EAアーキテクトらは、こうした"Boxes"間の連携の部分により注意すべきだ。

9. Not Establishing Effective EA Governance Early (効果的なEAガバナンスを早期に設定しない)
EAのアーキテクトは、ガバナンスのプロセスが設定される前により多くのアーキテクチャ積み上げようとする誘惑をはね除けなければならない。あるいは開発とガバナンスの両方を同時進行すべきだ。

10. Not Spending Enough Time on Communications (コミュニケーションに十分な時間を割かない)
EAにおける重要なメッセージはわかりにくい、ゆえにEAアーキテクトらは企業教育に力を注がなければならない。個々の聴き手に向けたメッセージでEAにおけるコミュニケーション計画を立て、実行することは重要だ。

以上が、EAにおける10の落とし穴だ。EAのアーキテクトらは瞬間的に完璧でエレガントなアーキテクチャを構築するのではなく、将来に最も適合できるアーキテクチャを構築すべきだというのがBittler氏の意見だ。