日本でマクドナルド店舗に行くと、並んでいる間に携帯を操作して電子クーポンを準備している人をよく見かける。最近になり、米国でもこうした電子クーポンの利用が急速に進んでいるようだ。米Associated Press (AP通信)の報道によれば、2009年前期の電子クーポン利用率は前年同期のおよそ2倍となり、買い物等で利用するクーポン全体の3%以上の比率になったという。

面倒なクーポンも"節約"への関心で再脚光

チラシの特売情報の隅についていたり、前回来店した際に配られたクーポンは、店舗に持ち込むことで指定の品が割り引き価格で買えたり、商品をもう1点タダでもらえたりする便利なものだ。販促キャンペーンやリピーター呼び込みの常套手段でもある。「Sale」や「Free」という言葉に弱い米国人はこうしたチャンスを目ざとく利用しており、スーパーなどで買い物すると毎回のように次回来店用のクーポン券を手渡されたりする。だがAP通信によれば、一方でこうしたクーポン券の取り扱いに煩雑さを感じている人々も多いようで、米国全体のクーポン券の利用件数は1992年以降下がり続けているという。ところが昨今の経済不況で、"節約"というキーワードが再び注目されるようになり、状況が変わりつつあるというのだ。

日本でも、スーパーの特売チラシや飲食店での数枚集めると食事が1回無料になるサービス券、街頭でのキャンペーン広告の半券を持ち込むと割引になるクーポンなどはお馴染みだろう。またインターネット接続が可能な高機能な携帯電話が早くから普及したこともあり、携帯にクーポンをダウンロードしたり、メールで割り引き情報を受け取ったりと、携帯文化に根ざしたサービスが広く利用されている。

クーポンアグリゲータやiPhoneサービスが人気に

前述のように新聞(もしくはフリーペーパー)の折り込みや、郵便受けに届くダイレクトメール型のチラシなどの扱いに抵抗を持つ利用者は依然として多いが、一方で若者や価格に敏感な層を中心に、よりコンパクトに利用できる電子クーポンの利用が少しずつ広まっている。典型的なのは「Coupons.com」で、こうした複数店舗のクーポンを集めた"アグリゲータ"と呼ばれるポータルサービスを使うことで、自身の住んでいる地域の特売情報を網羅することができ、買い物プランを立てることができる。

Coupons.comのサイト。クーポン印刷用のアプリケーションが用意されており、このサイトで情報を検索しつつクーポンをまとめて印刷できる

だが同サービスでは画面上のクーポンを印刷するスタイルが一般的で、これでは依然として紙時代の煩雑さと大差ない。そこで店舗によっては電子メール等でクーポン番号やイメージデータを送信し、買い物客は現地で携帯にそのクーポンを表示することで割り引き価格で買い物ができるようになる。例えばCellfireのサービスでは専用のiPhoneアプリを用意しており、ここにクーポン情報を表示して現地のストアで買い物ができる。Coupons.com同様にアグリゲータとしての機能を持っており、アプリの操作でiPhone上から最新のクーポン情報の検索やセーブも行える。

iPhoneアプリでクーポンが利用できる「Cellfire」。最初にSafewayまたはCala Foods (どちらも同系列の全米展開のスーパーマーケット)の会員証番号と郵便番号(ZIP)を登録すると、近くの店舗のクーポン情報を検索できる

電子クーポンには顧客をつなぎとめるうえで、いくつかのメリットがある。1つはキャンペーンを迅速に展開でき、素早く顧客にリーチできることだ。登録してもらった電子メールへのキャンペーンメール送信やキャンペーン用Twitterアカウントへのフォローで、最新の特売情報を伝えられる。一方で、こうしたキャンペーンの広がりが予想以上に早く、店舗側の対応が間に合わないことがある。Marsh Supermarketsが10ドル以上の買い物をした客に10ドルの割引サービスを提供するキャンペーンをFacebookで展開したところ、予想以上に利用者が殺到して同サイトでのキャンペーンを中止せざるを得なかったという。またフライドチキンで有名なKFC(ケンタッキーフライドチキン)は、今春に一部店舗で無料チキンのクーポンサービスを展開したところ、サイトへのアクセス殺到でシステムがダウンする被害に見舞われたという。KFCでの買い物客殺到の原因は、TVショウで大人気のOprah Winfrey(オプラ・ウィンフリー)のサイトで同クーポンが紹介されたことだったようだ。